国立劇場 歌舞伎鑑賞教室 義経千本桜 渡海屋・大物浦

国立劇場の鑑賞教室を観てきました。松緑初役の知盛です。好きな演目の上、渡辺保さんが劇評でけっこう誉めていたので、楽しみに観に行きました。


国立劇場に着くと、入り口前が学生でいっぱい。客席が埋まってみると、一階のほぼ全部と二階の5列目ぐらいまでは高校生ぐらいの学生でいっぱいで、そのほか大学生も来ているようでしたし、外国人の姿もちらほらと目につきました。


まず最初は、松也の「歌舞伎のみかた」。暗転した後、客席にライトが当たると通路に松也がいるという演出でまず客席を沸かせます。


去年も先月も思ったのですが、最近の鑑賞教室は説明の仕方が凝っていて、学生の関心をうまくひいていると思います。松也が立役と女形の歩き方の違いをやりながらツケの説明をしたり、相模五郎のご注進を実演しながら義太夫について説明したり、黒御簾の音について解説のときにはあの曲も流れて学生さんにけっこう受けてました。先月と同様に前のスクリーンに映像を映し出してあらすじの解説もしてくれました。松也の解説も非常にうまく、とてもよかったと思います。


さて、松緑は前半の銀平はそれほどでもなかったのですが、大物浦の知盛は壮絶な雰囲気がとてもよかった。過去に見た役者さんの知盛だと、義経や源氏を恨んでいてもどこか心の中で滅びの美学というか、平家の滅亡を達観してしまっている感じを受けることもあるのですが、松緑安徳天皇の言葉を聞くまでは、敵である源氏に対する激しい憎しみや討てない無念さがストレートにほとばしるように伝わってきました。それからよかったのが、「天皇はいずくにおわします」と安徳帝を探すときのセリフ。蘭平で繁蔵を呼ぶときにも感じましたが、感情がよく伝わってきました。


きっちり勤めようというう意識のせいか、見得などもわりとさらっとしていた感じがしましたが、祖父、父の演じた役でもあり、富十郎にも亡くなる前に何回か話を聞いていたとのことなので、とても思い入れがあるのでしょうね。


魁春は上品できっちり。亀三郎・亀寿が相模五郎、入江丹蔵で声がいいので注進はかっこよかった。魚尽くしはもっとおかしみがほしかったです。團蔵の弁慶はさすがにはまり役で安定していて最後をきっちりと締めてくれました。松緑の熱演はきっと学生たちにも伝わったことだと思います。月後半にもう一回ぐらい見てもいいかなという気がします。


渡海屋銀平実は新中納言知盛 尾上松緑
源九郎判官義経 尾上松也
相模五郎 坂東亀三郎
入江丹蔵 坂東亀寿
武蔵坊弁慶 市川團蔵
銀平女房お柳実は典侍の局 中村魁春