もう先月になってしまいましたが、初日の昼と19日の昼に平成中村座へ行きました。
七之助の十種香が一番の目当てだったのですが、他の二演目もとてもよかったです。
十種香は劇場に入ったとたんに、お香のいい香りが漂っていました。こういうのを感じられるのも小さい劇場ならでは。
幕が開いて最初は舞台装置が狭いのに違和感を感じましたが、段々と、前半の主要登場人物が3人のこの演目にはこのくらいの大きさの方が濃密な感じでいいのかなと感じるようになりました。
七之助の八重垣姫は実年齢が若いだけあって、これまで観てきた八重垣姫とは違って感じられました。部屋を出て、数珠を捨てて勝頼に駈け寄るところや、勝頼の刀にすがりつくところ、柱に巻きついての極まりの姿などに恋する乙女の一途な勢いを感じました。
扇雀の勝頼は憂いを含んだ表情がとてもいいと思いました。勘九郎の濡衣は落ち着いてしっとりとした雰囲気で黒の着物がとても似合っていました。彌十郎の謙信は体が大きいこともあって立派で大将の風格を感じました。橘太郎が白須賀六郎というのは中村座ならではで、キビキビとした動きが小気味良かったです。亀蔵の小文治は古怪な雰囲気が出ていました。
次の染五郎と勘九郎の踊りは観ていてワクワクしました。二人が競うように踊っていてそれでいてうまくかみ合っていて、ライバルであり仲の良い二人の様子が舞台にそのまま現れているように感じました。特に三社祭が非常に面白かった。石橋の毛振りも二人とも迫力いっぱい力いっぱいに振っていて素晴らしかったと思います。
最後がめ組の喧嘩。これがまたとても面白かった。何といっても狭い中村座であれだけの人数の役者が所狭しと大立ち回りするので、大迫力。勘三郎を筆頭に、勘九郎も錦之助も、鳶はみんな粋でいなせでかっこよかった。対する相撲の方は、橋之助の四ツ車が立派な力士の落ち着いた風格でさすがの存在感を出していました。
今回、辰五郎が喜三郎の家にいとまごいにいく場面が付いていて、これがあるおかげで、喜三郎がどんな人物なのかよくわかって、最後の止めに入る場面に説得力がありました。また、萬次郎と彦三郎が出ていることで舞台にとても厚みが出ていたと思います。
初日の最後はカーテンコールで梅玉、橋之助、勘三郎が挨拶。梅玉のカーテンコールなんて貴重なものを聞きました。
そして、19日には三社祭の猿若町の神輿が舞台に入ってきてとても盛り上がり、興奮しました。
ちなみに、19日は立見席が買えなかったので、雪席という補助席に座りました。上手と下手の一番後ろにあって、花道側には三席しかなかったのですが、花道が良く見えてなかなかいい席でした。
一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
十種香(じゅっしゅこう)
八重垣姫 中村七之助
腰元濡衣 中村勘九郎
原小文治 片岡亀蔵
白須賀六郎 坂東橘太郎
長尾謙信 坂東彌十郎
武田勝頼 中村扇雀
三社祭七百年記念
二、四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり)
神功皇后・武内宿禰
三社祭
通人・野暮大尽
石橋
武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精 市川 染五郎
神功皇后/善玉/通人/獅子の精 中村 勘九郎
三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうとりくみ)
め組の喧嘩(めぐみのけんか)
め組辰五郎 中村 勘三郎
辰五郎女房お仲 中村 扇 雀
四ツ車大八 中村 橋之助
露月町亀右衛門 中村 錦之助
柴井町藤松 中村 勘九郎
おもちゃの文次 中村 萬太郎
島崎抱おさき 坂東 新 悟
ととまじりの栄次 中村 虎之介
喜三郎女房おいの 中村 歌女之丞
宇田川町長次郎 市川 男女蔵
九竜山浪右衛門 片岡 亀 蔵
尾花屋女房おくら 市村 萬次郎
江戸座喜太郎 坂東 彦三郎
焚出し喜三郎 中村 梅 玉