4/8 仮名手本忠臣蔵@新橋演舞場

忙しくて感想を書かない間に終わってしまいましたが、新橋演舞場仮名手本忠臣蔵を通しで観ましたので、感想を書いておきます。


実は4月の演目が発表された当初、若手で忠臣蔵の通しかーと、全く期待もしていなかったのですが、予想に反して面白い舞台でした。もちろん、初役が多いということで、物足りない部分もあったのですが、若手たちがみんな懸命で熱さが伝わってきました。おかげで観ているこっちまで緊張して、ぐっと息をつめて観ていたのでいつもよりも観終わって疲れた気がします。


各役者さん、みんな熱演でそれぞれに良かった面があったのですが、中でも菊之助の判官が素晴らしかった。大序の大名らしいおっとりした上品さ、三段目での我慢に我慢を重ねた感情が爆発する様子、四段目で由良之助に伝える無念、初役とは思えない水準の高さでした。


次に印象に残ったのが亀治郎の勘平。何で上方のやり方でやるのだろうと思っていたのですが、セリフの端々に藤十郎にそっくりなところがあって、熱演タイプの亀治郎には上方の濃い感じが合っていました。脇も上方勢がきっちり固め、特に竹三郎が素晴らしかったおかげで、芝居に深みがありました。


染五郎の由良之助は、四段目はやはり家老らしい重みが足りない感じがしましたが、この場の緊迫感と主従の信頼関係は伝わってきて、由良之助が到着した瞬間、目頭が熱くなりました。周囲が宗之助、萬太郎、巳之助、廣太郎、廣松、弘太郎らで若いので血気にはやる感じがリアル。それを抑える染五郎も熱い。おそらく、こういう由良之助は初役の今だけのものなんだろうから今観ることができてよかったです。ただ、やっぱり染五郎は七段目の方がよくて、再演を重ねれば吉右衛門のようにとてもよくなりそうです。


松緑の師直は憎々しく、かつ風格も出ていてよかった。ただ、顔世に色目を使って話すところや三段目で若狭之助にペコペコするところなんかはちょっとくだけすぎて若さが出た感じ。これも歳をとっていけばどんどんよくなっていくのでしょうね。七段目の平右衛門は経験済みなだけあってうまかった。この人のこういう役はキビキビしていて軽妙でいい。福助のお軽も神妙にきっちり勤めていたので、二人の息が合っていて面白かったです。


獅童の若狭之助は意外と悪くなかった。いつも見た目はいいのに、セリフが歌舞伎の雰囲気が足りなくて一人だけ浮いてる感じがして残念だなと思うことが多かったのだけど、今回はわりと芝居に溶け込んでる感じがした。カッと熱くなりやすいところが獅童の雰囲気にあっているのかもしれません。定九郎の方は見た目かっこいいんだけど、最後の死に方がもう少しうまくやってほしいと思いました。


亀鶴は全然違う三役をやっていて本当に器用な人だなあと思いました。薬師寺左團次なんかと比べちゃうと、もっと憎らしさがあってもいいかもしれないと思いました。十一段目の小林平八郎は立ち回りが小気味よく、水に落ちた竹森喜多八を見る表情が錦絵のようないい顔でした。この人にはお才みたいな女形ももっとやってほしいです。


亀三郎と亀寿が重要な役で活躍してたのがうれしかった。声がいいので、二人が出てる場面はピリッと芝居が引き締まる。亀三郎の石堂は羽左衛門を思い出しました。
松也の顔世御前は上品な中にも色気があり、師直が横恋慕したくなるのもよくわかる雰囲気でした。


今後、このメンバーに、さらに海老蔵勘九郎七之助らが加わったらどんな舞台になるのか楽しみですね。



昼の部


大 序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場

三段目 足利館門前進物の場
    同 松の間刃傷の場

四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
    同 表門城明渡しの場

浄瑠璃 道行旅路の花聟

【大序・三段目】
             高師直  尾上松緑
          桃井若狭之助  中村獅童
            顔世御前  尾上松也
            足利直義  坂東亀寿
            塩冶判官  尾上菊之助

【四段目】
            塩冶判官  尾上菊之助
          石堂右馬之丞  坂東亀三郎
        薬師寺次郎左衛門  中村亀鶴
            顔世御前  尾上松也
            大星力弥  尾上右近
           原郷右衛門  坂東薪車
            斧九太夫  松本錦吾
          大星由良之助  市川染五郎

【道行】
           腰元おかる  中村福助
            鷺坂伴内  市川猿弥
            早野勘平  市川亀治郎




夜の部


五段目  山崎街道鉄砲渡しの場
     同 二つ玉の場

六段目  与市兵衛内勘平腹切の場

七段目  祇園一力茶屋の場

十一段目 高家表門討入りの場
     同 奥庭泉水の場
     同 炭部屋本懐の場

【五・六段目】
            早野勘平  市川亀治郎
            斧定九郎  中村獅童
          不破数右衛門  坂東亀三郎
           千崎弥五郎  坂東亀寿
          百姓与市兵衛  市川寿猿
            判人源六  坂東薪車
          一文字屋お才  中村亀鶴
            母おかや  坂東竹三郎
           女房おかる  中村福助

【七段目】
          大星由良之助  市川染五郎
          寺岡平右衛門  尾上松緑
           千崎弥五郎  坂東亀寿
           竹森喜多八  中村萬太郎
           矢間重太郎  坂東巳之助
            大星力弥  中村児太郎
           仲居おつる  中村歌江
            鷺坂伴内  市川猿弥
            斧九太夫  坂東錦吾
           遊女おかる  中村福助

【十一段目】
          大星由良之助  市川染五郎
            大星力弥  中村児太郎
          小汐田又之丞  大谷廣太郎
          木村岡右衛門  大谷廣松
            大鷲文吾  澤村宗之助
           竹森喜多八  中村萬太郎
           小林平八郎  中村亀鶴