1/21 壽 初春大歌舞伎@新橋演舞場

21日に新橋演舞場を通しで観てきました。


やはり、夜の部の富十郎の一周忌追善の吉右衛門、鷹之資の連獅子が素晴らしかった。観ていて胸が熱くなって、涙が出てきました。
吉右衛門の視線が時に厳しく、ときに優しく鷹之資を見守る様子は役を超えて実際の二人の関係を観ているようでした。
鷹之資はとてもしっかり踊っていました。吉右衛門も鷹之資の後見人としてしっかり支えていこうという決意、気迫のようなものが感じられました。吉右衛門の毛振りも体力的に大変なのでしょうし、ゆったりと回している感じでしたが、素晴らしかったです。親子ではないけれど、歌舞伎というのはこうして先人の思い、芸、伝統を伝えていくんだなあと感動しました。鷹之資には頑張ってほしいです。


昼の部では金閣寺がよかった。菊之助の雪姫はきれいであるだけでなく、夫への思いや親の仇を討とうという強い意思が感じられて、これだけ一途な思いがあれば爪先鼠の奇跡的な出来事が起きてもおかしくないと思わされました。縛られた姿も美しかった。雀右衛門なんかは縛られている儚げな風情がよかったですが、菊之助は縛られていても芯の強さが感じられました。桜の木が上手にはなく、下手に縛られていましたが、この方がいいなと思いました。この方が、縛られた夫と対面した時に縄のせいで手が届かないもどかしさと、夫が連れられて行ったあと、夫の行方を気にするときに花道の方まで行けるので、思いがより強く伝わってくるように思います。


三津五郎の大膳が国崩しの悪の風格があってよかった。英雄色を好むというような雰囲気もあって、雪姫の手を引いて滝の方へ歩いていく姿に色気もありました。あの縛られた姿を見よ、なんてセリフにもそこはかとない色気が漂っていてよかった。それでいて下品にはならないところが三津五郎らしいと思いました。ほかでは、老け役が多い歌六の白塗りというのは珍しいなと思いましたが、品があってよかったです。


相生獅子は、魁春芝雀も品のいい役者さんなので、お姫様らしい雰囲気でした。後半の毛振りはほかの獅子物ほどではないですが、見ていて華やかで満足しました。


加賀鳶は菊五郎吉右衛門が並んでいるだけでも見ごたえがありました。


矢の根、三津五郎のセリフが明晰なのと、見得がきっちり力強くきれいなのがよかったです。欲を言えば、荒事らしい稚気がもっとあればよかったと思います。田之助がほんのちょっとしか出ないのがもったいない。


め組の喧嘩は、菊五郎劇団らしい大人数での立ち回りがとても楽しかったです。藤間大河くんがしっかりしていて将来が楽しみです。


昼の部

一、相生獅子(あいおいじし)
                     姫  中村魁春
                     姫  中村芝雀



  祇園祭礼信仰記
二、金閣寺(きんかくじ)
            此下東吉実は真柴久吉  中村梅玉
                    雪姫  尾上菊之助
            十河軍平実は佐藤正清  中村錦之助
                 松永鬼藤太  中村松江
                狩野之介直信  中村歌六
                  慶寿院尼  中村東蔵
                  松永大膳  坂東三津五郎



  盲長屋梅加賀鳶
三、加賀鳶(かがとび)
  本郷木戸前勢揃いより
  赤門捕物まで

            天神町梅吉/竹垣道玄  尾上菊五郎
                 女按摩お兼  中村時蔵
                春木町巳之助  坂東三津五郎
                   魁勇次  中村又五郎
                 虎屋竹五郎  中村錦之助
                昼ッ子尾之吉  尾上菊之助
                  磐石石松  中村松江
                 数珠玉房吉  坂東亀三郎
                 御守殿門次  坂東亀寿
                金助町兼五郎  尾上松也
                    お朝  中村梅枝
                  妻恋音吉  河原崎権十郎
                  天狗杉松  坂東秀調
                御神輿弥太郎  市川團蔵
               道玄女房おせつ  中村東蔵
                伊勢屋与兵衛  坂東彦三郎
                  雷五郎次  市川左團次
                 日蔭町松蔵  中村吉右衛門




夜の部

一、歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)
                  曽我五郎  坂東三津五郎
               大薩摩主膳太夫  中村歌六
                馬士畑右衛門  坂東秀調
                  曽我十郎  澤村田之助



  五世中村富十郎一周忌追善狂言
二、連獅子(れんじし)
          狂言師右近後に親獅子の精  中村吉右衛門
          狂言師左近後に仔獅子の精  中村鷹之資
                   僧蓮念  中村錦之助
                   僧遍念  中村又五郎



三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)
  め組の喧嘩
  品川島崎楼より
  神明末社裏まで

                 め組辰五郎  尾上菊五郎
                    お仲  中村時蔵
              尾花屋女房おくら  中村芝雀
               九竜山浪右衛門  中村又五郎
                 柴井町藤松  尾上菊之助
                伊皿子の安三  中村松江
                  背高の竹  坂東亀三郎
                 三ツ星半次  坂東亀寿
               おもちゃの文次  尾上松也
                御成門の鶴吉  市村光
                 山門の仙太  市川男寅
                   倅又八  藤間大河
                 芝浦の銀蔵  大谷桂三
                神路山花五郎  澤村由次郎
               宇田川町長次郎  河原崎権十郎
              島崎楼女将おなみ  市村萬次郎
               露月町亀右衛門  市川團蔵
                江戸座喜太郎  坂東彦三郎
                 四ツ車大八  市川左團次
                焚出し喜三郎  中村梅玉