10/23 10月歌舞伎公演「通し狂言 開幕驚奇復讐譚(かいまくきょうきあだうちものがたり)」@国立劇場

10月の国立劇場の感想です。


幕開きはいきなり舞台から客席の方に黄色いライトが照らされてびっくりしました。金閣寺のきらびやかさを表す演出なんでしょうけど、ちょっと唐突。そして、田之助足利義満田之助が出るのはひさしぶりに観るのでうれしかったです。新田貞方が藤白安同に殺される場面は、黒いバックに二人の顔だけ白く浮かび上がらせて表現し、その場面は新田小六の夢だったという形。九六媛仙境の場のセリを使った場面とか、いろいろ工夫しているのはいいんだけど、新しげな手法を使うほど、かえってちょっと陳腐に見えるのが不思議なところ。


見どころの両宙乗りは楽しかったけど、菊五郎菊之助はわりとあっさり。もちろん菊之助が曲芸のようにぐるぐる回転するのはすごかったのだけど、わりとできて当たり前みたいな涼しい顔で飛んで行った。猿之助亀治郎だったらもっとお客さんにアピールしてこってりやるんだろうけど、菊五郎菊之助は比較的あっさりしてました。楽しかったし、二人で宙乗りするだけで十分なんですが、亀治郎が新橋で宙乗りやってるのと同じ月なのでつい比べて考えてしまいました。


三幕目から世話になって以降は、菊五郎の本領発揮ですばらしかった。
宿の場面ではなでしこジャパンを当て込んだ仲居が出てきたけれど、正月のAKBや以前のお笑い芸人のギャグなんかに比べるとインパクトに欠けていた感じがしました。


最後、足利義満が暗殺される場面は今回の脚本で初めて劇化されたそうですが、術を使って傷をつけずに殺して頓死と見せるというのは面白いと思いました。


なんだかんだいろいろもりだくさんで楽しかったです。



曲亭馬琴=作『開巻驚奇侠客伝』より
  尾上菊五郎=監修
  国立劇場文芸課=脚本
通し狂言 開幕驚奇復讐譚(かいまくきょうきあだうちものがたり) 五幕十場
尾上菊五郎 尾上菊之助
宙乗りにて術譲り相勤め申し候


国立劇場美術係=美術

発  端      新田貞方討死の場

序  幕(相模) 箱根賽の河原の場


        底倉温泉藤白家浴館の場

二幕目  九六媛仙境の場

三幕目(伊勢) 上多気宿街道筋の場


          同     旅籠屋の場


          同     店先の場


          飼坂峠の場

四幕目(河内) 千剣破村木綿張荷二郎内の場

大  詰(山城) 北山殿金閣の場


尾上菊五郎:仙女九六媛/木綿張荷二郎/管領斯波義将
中村時蔵:藤白の妻長総/四代将軍足利義持
尾上松緑:新田左少将貞方/新田小六助則
尾上菊之助:褄笠小夜二郎/楠姑摩姫
坂東亀三郎:荷二郎の子分野狐銀次
坂東亀寿:足利の重臣熊谷満実
中村梅枝:小六の若党野上復市
尾上右近:足利の重臣赤松満雅
中村萬太郎:足利の重臣宮満重
尾上松也:荷二郎の子分小狸金太
河原崎権十郎:藤白隼人正安同
市村萬次郎:小六の乳母母屋
市川團蔵:旅籠屋亭主与九介/楠家の重臣隅屋小一郎維盈
坂東彦三郎管領畠山満家
澤村田之助:三代将軍足利義満


尾上梅之助:旅籠屋仲居穂希
尾上菊三呂:旅籠屋仲居佳里奈
尾上徳松:旅籠屋仲居菜穂美