5月 新橋演舞場 天下茶屋・籠釣瓶

昼の部

一、敵討天下茶屋聚(かたきうちてんがぢゃやむら)
  浮田館
  四天王寺
  東寺貸座敷
  福島天神の森
  天下茶屋


      安達元右衛門/東間三郎右衛門  松本幸四郎
                早瀬伊織  中村梅玉
                妻染の井  中村魁春
               早瀬源次郎  中村錦之助
                 妻葉末  市川高麗蔵
               坂田庄三郎  大谷友右衛門
               岡船岸之頭  大谷桂三
               田楽師松阿  大谷廣太郎
               田楽師竹阿  大谷廣松
                 奴腕助  松本錦吾
                安達弥助  坂東彌十郎
                京屋萬助  中村歌昇
               片桐造酒頭  中村歌六
               早瀬玄蕃頭  市川段四郎
             人形屋幸右衛門  中村吉右衛門


幸四郎は三郎右衛門は悪の大きさを出していてよかったけれど、一方の元右衛門は滑稽さを出そうとしすぎているわりにはあまりよくなかった気がした。屋根に上って中に入ろうとするところとか、コミカルで面白くはあったんだけど、本当はもっと自然ににじみ出てくる愛嬌が必要なんだろうけど、幸四郎にはちょっと向いていないかなと思いました。


夜の部


一、籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)
  発端 戸田川原お清殺しの場より
  大詰 立花屋大屋根捕物の場まで


             佐野次郎左衛門  中村吉右衛門
                 八ツ橋  中村福助
              立花屋おきつ  中村魁春
                  九重  中村芝雀
                下男治六  中村歌昇
                盲の文次  中村錦之助
                  七越  市川高麗蔵
                腹太弥七  中村松江
               禿山の松蔵  中村種太郎
             初菊/娘お千代  中村壱太郎
              赤目の卯左吉  中村種之助
               土竜の石松  中村米吉
                  お清  中村歌江
               絹商人丈助  大谷桂三
              絹商人丹兵衛  澤村由次郎
                釣鐘権八  坂東彌十郎
                都築武助  中村歌六
              佐野次郎兵衛  市川段四郎
              立花屋長兵衛  中村東蔵
           高松安之進妻おとし  片岡秀太郎
               繁山栄之丞  中村梅玉
               立花屋お駒  中村芝翫


普段は出ない場面が出て、籠釣瓶が手に入ったいきさつと、次郎左衛門があばた顔な理由がわかるようになっていました。発端は確かにストーリーとしてはなくてもいいような場面だけど、歌江さんと段四郎さんがどろどろした因縁の暗い雰囲気を出していてなかなかよかった。次の場面は、吉右衛門が出てきて、さっきの場面は次郎左衛門が見た夢だったという設定。ここから籠釣瓶が手に入ったいきさつが語られる。歌六が昼に続いてかっこいい役。老け役が多いけど、声がいいのでこういう男前な役もとてもよい。
次郎左衛門を襲うごろつきが、普段男前の役が多い錦之助なのが意外でした。松江、種太郎、種之助、米吉らの手下もすごいきたない化粧でちょっとびっくり。壱太郎が可憐できれいでした。


普段上演される場面になってからは吉右衛門がさすが。吉右衛門の演技に引っ張られたのか、福助も控えめにきっちりと演じていて以前見たときより良かった。花道での笑みでは福助は過去に観たときはニヤーっとしたオーバーな感じで客席から失笑が起きていたのですが、今回はそんな失笑も起きませんでした。縁切りのところで吉右衛門のセリフをそっぽ向いて聞いているときの表情も内面が感じられてよかったです。


九重の部屋で八ツ橋に意見する場面が出たので、九重がどういう人なのかがわかって面白かったです。芝雀がよかった。
あとは芝のぶがきれいでした。花魁道中で八ツ橋の着物の裾をさばいたり、縁切りの場面でキセルを渡したりいろいろ世話をしているのが福助の見せ場なのについつい後ろにいる芝のぶに目が行ってしまいました。


歌昇の冶六は何回も観てますがはまり役。芝翫は声が小さかったのが心配でした。


最後に普段出ない立ち回りが出てましたが、本水も使ったわりにはあまり大したことのない立ち回りで、付け足し感がありました。次に出すことがあったら、もうちょっと工夫ができるんじゃないでしょうか。


二、あやめ浴衣(あやめゆかた)
                 若い女  中村芝雀
                 若い男  中村錦之助
                 若い男  中村歌昇