3月新橋演舞場

昼の部


一、恩讐の彼方に(おんしゅうのかなたに)
中間市九郎後に僧了海    尾上松緑
中川実之助    市川染五郎
お弓    尾上菊之助
馬士権作    坂東亀三郎
若き夫    坂東亀寿
浪々の武士    中村亀鶴
中川三郎兵衛    市川團蔵
石工頭岩五郎    中村歌六


これは観るのが初めてで、どんな話かも知らずに観に行ったのですが、思ったより良く、最後、松緑染五郎が抱き合う場面は感動して泣いてしまいました。前半の松緑は実直で臆病ながら主人を殺してしまい、盗賊に身を落とすという、芯からの悪人ではない雰囲気がにじみ出ていて、後半で僧になってからは何十年も一途に洞窟を掘る悔恨と真摯な姿勢がよかった。松緑染五郎の熱演が光った一幕でした。


それにしても、菊之助の悪女ぶり、最近貫禄が出てきました。悪婆物とかやってほしいです。ほんのちょっとしか出ない亀鶴が仇を追い求めて疲れ果てた浪人で存在感を見せていました。


六世中村歌右衛門十年祭追善狂言
二、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ) 御 殿、床 下


乳人政岡    中村魁春
八汐    中村梅玉
沖の井    中村福助
澄の江    中村松江
一子千松    中村玉太郎
荒獅子男之助    中村歌昇
松島    中村東蔵
仁木弾正    松本幸四郎
栄御前    中村芝翫


魁春初役の政岡。魁春らしいというか、落ち着いているというか、地味というか、品があるというか、控え目というか、堅実というか、そういった雰囲気を感じました。これまで見た他の人の政岡は大人物っぽい感じだったのですが、魁春の政岡は出てきた瞬間に、いかにも乳母という雰囲気で独特のものがありました。飯炊きはやっぱり耐えられずに途中で寝てしまいました。


三、曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
  御所五郎蔵


御所五郎蔵    尾上菊五郎
傾城皐月    中村福助
傾城逢州    尾上菊之助
新貝荒蔵    坂東亀三郎
秩父重介    坂東亀寿
二宮太郎次  尾上右近
番頭新造千代菊    中村歌江
梶原平蔵    河原崎権十郎
甲屋女房お京    中村芝雀
星影土右衛門    中村吉右衛門


菊五郎吉右衛門がかっこいい!それに尽きます。それと、菊之助がきれいでした。


夜の部


  源氏物語
一、浮舟(うきふね)
   第一幕 二条院の庭苑
   第二幕 宇治の山荘
   第三幕 二条院の庭苑
   第四幕 宇治の山荘
       浮舟の寝所
   第五幕 宇治の山荘
       宇治川のほとり


 匂宮    中村吉右衛門
 薫大将    市川染五郎
 浮舟    尾上菊之助
 侍従  尾上右近
 右近    市村萬次郎
 中の君    中村芝雀
 弁の尼    中村東蔵
 中将    中村魁春
 時方    尾上菊五郎


吉右衛門が面白かった。女好きとはいっても、下品にはならず、公家らしいふんわりした感じは出ていました。どちらかというと菊五郎の方が遊び人っぽい感じでしたね。染五郎はいかにも貴公子という雰囲気がよく出ていました。烏帽子がよく似あう。
ただ、脚本が、「浮船は〜ですわ。」とか、聞いてて恥ずかしくなってしまいました。音楽もちょっと違和感。


二、水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ)
  筆屋幸兵衛
  浄瑠璃風狂川辺の芽柳」


               船津幸兵衛    松本幸四郎
              萩原妻おむら    中村魁春
               車夫三五郎    尾上松緑
              差配人与兵衛    松本錦吾
             代言人茂栗安蔵    河原崎権十郎
              巡査民尾保守    大谷友右衛門
             金貸因業金兵衛    坂東彦三郎


幸四郎は世話物はあんまりあっていないと思うのだけど、なんでやりたいんでしょうね。前回初役でやったときよりも自然でよかったように思いましたが、狂う場面はどうしてもオーバーに見えてしまって興ざめです。今回、幸四郎のアイディアで幸兵衛以外はみんなざんぎり頭にして、幸兵衛の孤独感を出したそうですが、それはなかなか成功したんじゃないでしょうか。権十郎と彦三郎がいかにも悪そうでした。



  
六世中村歌右衛門十年祭追善狂言
三、吉原雀(よしわらすずめ)
               鳥売りの男    中村梅玉
               鳥売りの女    中村福助


暗い話の後なので、華やかに観終わることができて気分良く家路につきました。