ルテアトル銀座 二月花形歌舞伎 第二部 「女殺油地獄」 千秋楽

昨日、ルテアトル銀座の第二部千秋楽を観てきました。
月の半ばにも観たのですが、そのときよりすごくよくなってました。


特に、殺しの場面は前に見たときより二人の息も合っていて、たっぷり緊迫感のある場面を味あわせてもらいました。それと、この劇場の狭さって歌舞伎を上演するのに本来は向いてはいないのかもしれないけど、こういう濃密な場面を見せる芝居には向いてるのかなとも感じました。


殺しの場面のあとからは、普段の上演では出ない場面。廓で遊ぶ与兵衛が客席を歩いて出てくる。千秋楽ということで、謎かけが3連発の大サービス。お題は、好きな人とかけて、ルテアトル銀座とかけて、千秋楽とかけてで、3つとも見事な答えでした。


それにしても、殺しの凄惨な場面から一転して明るい染五郎が出て、さらに次の場面ではお吉が亡くなってから35日で皆が悲しんでいる場面と、非常によくできた場面転換だと思います。


観る前は、最後に与兵衛も少しは反省するのかと思っていましたが、逮捕される直前まで暴れたり、おじや兄に悪態ついたり、まったく反省の色が観られません。


最後、縄をかけられて花道を歩いて行く、与兵衛の表情がなんとも言えませんでした。


亀治郎のお吉もよかったし、彦三郎、秀太郎の子供を思う気持ちがよく伝わってくる演技もよかった。亀鶴も実直ないいお兄さんの雰囲気が出ていました。


最後はカーテンコール。染五郎さんがひとりで出てきて、「亀治郎さんはお風呂に入ってしまいました。」と。歌舞伎座が休場中も歌舞伎の火を消さないように頑張るという趣旨のことをおっしゃってました。


どうしても仁左衛門さんの一世一代がまだ印象に残っているだけに、比べて観てしまったのですが、最後を付け加えたことで染五郎独自の与兵衛になっていた気がします。芝居っぽい味では仁左衛門さんにはかなわないけど、リアリティのある、現実に近い芝居になっていた気がします。今後も逮捕までやる形で上演を続けていってほしいです。


ところで、両隣に座っていた人たちは歌舞伎を初めて観るような人だったみたいです。6時半開演という、会社員でも来れる時間にしたのは成功だったと言えるんじゃないでしょうか。


女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)
                   
河内屋与兵衛  市川染五郎
お吉  市川亀治郎
芸者小菊  市川高麗蔵
小栗八弥  坂東亀三郎
兄 太兵衛  中村亀鶴
妹 おかち  澤村宗之助
叔父 森右衛門  松本錦吾
豊嶋屋七左衛門  市川門之助
父 徳兵衛  坂東彦三郎
母 おさわ  片岡秀太郎