国立劇場の仮名手本忠臣蔵、三段目、四段目、七段目、十一段目という中途半端な通しなので、どうなのかなーと思って行きましたが、不満もあったけど、結果的には、まあ思ったよりよかったかなーといった感じでした。
まず、幸四郎の高師直ですが、すごく憎々しげで悪役らしい感じでした。
先月の河内山の通しでも思ったのですが、この人は実は悪役がすごく
あっているんじゃないかと思いました。
大序がないからなのか、衣装が烏帽子大紋で、着替えをしない「姿見の師直」
の簡易版のような場面があって、なかなかおもしろかったです。
染五郎の判官は上品でよかった。四段目の切腹はやはり泣いてしまいました。
左団次は薬師寺の印象が強いのですが、石堂も思ったよりよかった。
大星に声をかけるところなんかやさしい感じがよく出ていました。
道行では幕切れに亀鶴がトンボを切ったのでびっくりしました。
トンボ切る伴内は記憶にないです。後で知ったのですが、前日までは
やってなくて、この日はじめてやったようで、どうやらラッキーな日に
当たったようです。伴内はこのあと七段目にも出てますが、全体的に
無理におかしくして笑いを取ろうとしないで、自然なおかしみを出していて
良い印象を持ちました。前月の女形といい、いろいろと器用な人だと思います。
五、六段目をやらないかわりに、七段目の前に講釈師がすっぽんから上がってきて
五、六段目のあらすじを語っていましたが、ちょっと中途半端な印象を受けました。
七段目は前半をカットされていて、時間の関係とはいえ、これはよくないと思いました。
11段目は特にいつもと変わりなし。引き上げの場面は気持ちよく、忠臣蔵見たな―と
いういい気分になりました。いろいろ不満なところもあるけど、最後まで通すことで、
外国人や忠臣蔵を初めてみる人にもわかりやすかったと思います。
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 五幕
国立劇場美術係=美術
三段目 足利館松の間刃傷の場
四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
同 表門城明渡しの場
浄瑠璃 道行旅路の花聟−清元連中−
七段目 祗園一力茶屋の場
十一段目 高家表門討入の場
同 奥庭泉水の場
同 炭部屋本懐の場
引揚げの場
高武蔵守師直/大星由良之助(松本幸四郎)
顔世御前/お軽(中村福助)
小林平八郎(中村錦之助)
塩冶判官高定/早野勘平/寺岡平右衛門(市川染五郎)
市川 高麗蔵
市川 門之助
市川 男女蔵
中村 亀 鶴
澤村 宗之助
中村 児太郎
松本 錦 吾
大谷 桂 三
澤村 由次郎
市川 右之助
坂東 秀 調
市村 家 橘
大谷 友右衛門
坂東 彦三郎
市川 左團次 ほか