4月歌舞伎座 1部―2
第1部の二幕目は吉右衛門の熊谷陣屋。
吉右衛門がすばらしくて泣きました。
二、熊谷陣屋(くまがいじんや)
熊谷直実 吉右衛門
白毫弥陀六 富十郎
藤の方 魁 春
亀井六郎 友右衛門
片岡八郎 錦之助
伊勢三郎 松 江
駿河次郎 桂 三
梶原平次景高 由次郎
堤軍次 歌 昇
源義経 梅 玉
相模 藤十郎
最初に熊谷が花道を出てきて、七三で数珠をふと見る、そのしぐさと表情だけでも泣きそうになりました。
一の谷の合戦を物語る場面、月並みな言い方ですが、戦場の場面が目に浮かぶようでした。とくに、刀を敦盛に見立てて、扇で土を払ってあげるしぐさなど、熊谷の優しさとか情がすごく感じられました。
これまで吉右衛門や幸四郎がやるのを何回か見てきましたが、制札の見得とか、熊谷の派手なかっこよさと、最後の引っ込みだけに目が行きがちだったので、ここまで話に引き込まれたのは初めてでした。
首実検で義経に首を差し出す瞬間の緊迫感、表情もすばらしかった。
最後の花道での十六年は一昔、夢だ夢だのセリフからの引っ込みで涙が止まりませんでした。
藤十郎の相模もいかにも子供を思いやる愛情深い母親らしい雰囲気がよかったし、富十郎も弥陀六の間はふつうのおやじの雰囲気から宗清だと見破られてからの雰囲気の違いのカッコよさ、義経と頼朝を助けたせいで平家が滅亡しようとしていることへの無念さがすごく伝わってきてすばらしかった。