国立劇場 新皿屋舗月雨暈 お蔦殺しと魚屋宗五郎

国立劇場 3月花形歌舞伎公演


河竹黙阿弥=作
尾上菊五郎=監修
通し狂言 新皿屋舗月雨暈 −お蔦殺しと魚屋宗五郎−


松緑が初役で魚屋宗五郎。今回は、通し狂言ということで、普段はほとんど上演されない「お蔦殺し」の場面が出ているので楽しみに見に行きました。


お蔦殺しの場面は、期待してたほどではありませんでしたが、この場面があることで魚屋宗五郎の場面がわかりやすかったです。皿屋舗というだけあって、皿屋敷を下敷きにしている話なんですが、幽霊は出ませんでした。パンフレットや上演台本には出てくるっぽいことが書かれているので、後とのつながりを考えて、外したんでしょうか。友右衛門の殿様は、もっと激しく酒乱っぽくてもよかったのかなあとも思いました。


宗五郎は、だんだん酔っ払っていくところがみどころ。菊五郎のやるのなんかを見ると、本当に酔っ払っていくように見えるんですが、そこは松緑はいまいちでした。素面から、飲んだら、急に酔ったみたいでそのプロセスが全然。でも、誰がやっても最初は難しいらしいので仕方ないんでしょうね。


でも、松緑が初役でまじめに神妙に演じているせいで、菊五郎なんかときと違って、殿様との身分の違いの苦しさみたいなものを感じることができました。特に、最初に出てきたとき、妹が斬られたのに、殿様に恩もあるし、完全にあきらめているところと、殿様の庭で、殿様に手をついて謝られて、お金も渡されて、へへーっと平伏して納得してしまう庭先のところ。

庭先は、普段大物の役者さんがやっていると、それまでの気が大きくなって屋敷に乱入したのと態度があまりに違っていて客から笑いがおきたりするのですが、今回はそれがありませんでした。あくまでも身分違いで、殿様に謝られたらそれで仕方がないというのがなんとなく納得できたのです。ベテラン役者だと殿様より偉そうに見えてしまうのが松緑が若いのでそれがなかったということと、お蔦殺しとこの場面での殿様の差から、殿様も反省しているんだということがわかりやすかったせいだと思います。

宗五郎のやったことって、あえて今の感覚でいうと、酔っ払って首相官邸とか皇居に殴り込んじゃったって感じなんでしょうかね。


三津五郎が宗五郎とお蔦を二役やったことがあるようですが、勘太郎とか、菊之助とか誰かやってほしい気もします。


序幕  磯部邸弁天堂の場 同 お蔦部屋の場
二幕目 磯部邸井戸館詮議の場
三幕目 片門前魚屋宗五郎内の場
四幕目 磯部邸玄関先の場 同 庭先の場


愛妾お蔦/宗五郎女房おはま  片岡 孝太郎
魚屋宗五郎          尾上松緑
浦戸紋三郎/小奴三吉     坂東亀寿  
召使おなぎ          中村梅枝
鳶吉五郎           中村萬太郎
岩上典蔵           片岡亀蔵
磯部主計之介         大谷友右衛門
家老浦戸十左衛門       坂東彦三郎