新橋演舞場 源平布引滝

新橋演舞場の昼の部を観てきました。
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/2008/09/post_11-Highlight.html

以前、仁左衛門の「義賢最期」を見たときから、ぜひ「実盛物語」との通しで観たいと思っていたので、念願かなってとてもうれしい観劇でした。


「義賢最期」と「実盛物語」を続けて観ると、話がとてもわかりやすいです。実盛物語の中で、腕を切り落とされた小万の死体に腕をつなげると息を吹き返すという場面がありますが、義賢最期を観るまでは歌舞伎にありがちな単なる荒唐無稽な話だなーと思っていました。


でも、義賢最期を観ると、義賢が命がけで小万に託し、小万が必死で守った宝物の白旗を握り締めていた腕だということがわかるので、写実的にはありえないけど、お芝居的にはおかしくないように思えてきます。仁左衛門の義賢と田之助の小万を観たときに、そんなことを感じましたが、海老蔵の義賢と門之助の小万も白旗を守り通す気持ちが伝わってきました。


海老蔵の義賢は最初の方は仁左衛門に比べると風格が足りない感じはしましたが、立ち回りになってからは、さすがにかっこよかったです。戸板をコの字型に立てた上に乗っかってそれを倒す戸板崩しはすごいですね。仁左衛門のときは3階で観たんですけど、今回は1階前の方で観たので高さが実感できました。あの上に乗るのは怖いでしょうねぇ。


それに比べて、両手を広げてまっすぐに階段に倒れる「仏倒れ」は、まっすぐ頭から倒れないで、ややひざをつかって加減してたようで迫力が足りず残念でした。仁左衛門のは3階から観ててもすごい迫力だったんで期待してたんですが。


でも、実際に観てみて、何故なかなか通しで上演されないのかよくわかった気がします。義賢最期だけで、最期の壮絶な立ち回りを観てるこっちも息を詰めて観てるのでけっこう疲れます。演じてる役者は仏倒れと戸板崩しで怪我する可能性もあるし、大変だと思います。これが通してできるのは若いうちだけですね。


実盛物語はあまり好きな話ではないのですが、義賢最期からの流れですんなり入り込めました。海老蔵の実盛が立派でした。それと、座ったままの姿勢でトンボをきる市蔵の平馬返りを観れてよかったです。


実盛物語が終わって、充実感があったので、もうひとつあるのを忘れて勘違いして帰りそうになりました。重いのの後だからラストは20〜30分の軽い踊りで終わりにすればいいのにと思いましたが、枕獅子は華やかでなかなかよかったです。時蔵は夜はひたすら我慢するつらい役なので、昼の部は発散できる役がやりたかったんだろうと思いました。

一、源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)
義賢最期、竹生島遊覧、実盛物語
       
木曽義賢/斎藤実盛市川海老蔵
下部折平実は多田蔵人(河原崎権十郎
小万(市川門之助
進野次郎(市川男女蔵
葵御前(尾上松也
待宵姫(中村梅枝
九郎助(市川新蔵
塩見忠太(市川猿弥
瀬尾十郎(片岡市蔵
小よし(市川右之助
平宗盛大谷友右衛門


二、枕獅子(まくらじし)
傾城弥生後に獅子の精(中村時蔵
禿たより(尾上松也
禿ゆかり(中村梅枝