国立劇場12月歌舞伎公演「鬼一法眼三略巻」

国立の鬼一法眼三略巻、約40年ぶりという六波羅清盛館があるおかげで、菊畑の鬼一、湛海、皆鶴姫の置かれている状況がとてもわかりやすかった。歌六の清盛は風格があって立派。歌昇の湛海が振られた上に剣術にも負ける小物っぷりがよかった。芝雀が凛としていて、菊畑だけだと単なるお姫様だけれどもこの場面があるおかげでさすが鬼一の娘という雰囲気を見せていました。錦之助の重盛が颯爽とした雰囲気。


平重盛が清盛に諫言する場面があるおかげで、大蔵卿の「清盛に智恵はなけれど、重盛という小松のある内は平家滅亡思いもよらず」というセリフが、ああそういうことかと改めて納得できました。時間的には30分程度の場面だけど、なかなか面白かった。


菊畑、吉右衛門の鬼一は風格があってさすが。普段だと知恵内を中心となる役者がやっているので、鬼一は脇役っぽい感じになりますが、本来鬼一が重要な人物なんだということがよく感じられました。これだったら、めったに出ないという奥庭が出てもいいんじゃないかと思いました。文楽で観た時はとても面白かったですので。


大蔵譚は、吉右衛門の作り阿呆が自然でさすが。「源氏にも愛せられず、又平家にも憎まれず」というあたりに、源平の乱世で身を潜める哀しさを感じました。


文耕堂・長谷川千四=作
鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき) 四幕
          国立劇場美術係=美術

       
   序 幕  六波羅清盛館の場   
   二幕目  今出川鬼一法眼館菊畑の場
   三幕目  檜垣茶屋の場
   大 詰  大蔵館奥殿の場



吉岡鬼一法眼/一條大蔵卿   中村吉右衛門    
常盤御前   中村魁春
平清盛   中村歌六
奴知恵内   中村又五郎
勘解由妻鳴瀬   市川高麗蔵
播磨広盛   中村松江
笠原湛海   中村歌昇
腰元白菊   中村種之助
女小姓楓   大谷廣松
丹羽頼兼   中村隼人
女小姓弥生   中村米吉
腰元錦木   中村歌江
難波経康   大谷桂三
八剣勘解由   澤村由次郎
平重盛   中村錦之助
皆鶴姫   中村芝雀
鬼次郎女房お京   中村東蔵
奴虎蔵/吉岡鬼次郎   中村梅玉