10月 新橋演舞場 昼の部

10月昼の部の感想です。

昼の部で一番よかったのは何といっても義賢最期。迫力があってよかった。
愛之助は3回目で、東京では初だそうです。私は平成12年に歌舞伎座で見た、仁左衛門の義賢の大きさがとても印象に残っていて、どうしても比べてしまうのですが、それには及ばないもののとても立派だったと思います。


前半、髑髏で上使を叩くところは、そこにいたるまでの上使の二人がもっと嫌な奴の方が、抑えてきた感情が爆発する爽快感が出ると思うのですが、延郎と當十郎は憎々しさが足りなかった。調べたところ、仁左衛門で見たときは片岡十蔵、亀蔵でしたので、よけいにそう感じたのかもしれません。
後半、立ち回りはとてもかっこよかった。戸板倒しで観客から思わずうゎーっと声が出てしまうところから、バンと降りて極まるところは何度見てもスカッとします。
もちろん、良いのは立ち回りだけではなく、白旗を何としても守りたいという気持ちが根底にあって、それが伝わってくるので感動しました。最後の仏倒れも勢い良くバッタリと倒れて、見ごたえがあり、感動しました。


ほかの出演者では、獅童は、一心太助よりもここでの奴の役の方がいい。顔と声はいいものを持っているのだから、演技とセリフをもっと勉強したらいいのにといつも残念に思います。錦吾の手堅い演技がよかったです。ただ、「われより先にかかが抱かれたがるわい」とか、「孫は背中、御台様はお腹、かりそめながら四人連れ」とか、ちょっとおかしみのあるセリフはさらりとしてあまり面白くなかった。ここは松本幸右衛門がとてもうまかったのを覚えています。


京人形は楽しい演目でした。笑也の美しさが人形にぴったり。まったくまばたきをしないのがすごかった。


一心太助は楽しかったのですが、ちょっと獅童ははしゃぎすぎかなとは思いました。こういうのでOKなら、香川照之ならもっとうまく演じるんじゃないだろうかと思ってしまいました。おじさんの萬屋錦之助はどんな風に演じていたのでしょうか。
亀治郎のお仲はとてもかわいらしかった。
それから、こういうバタバタした喜劇風な感じの話だとよけいに、錦吾や欣弥のしっかりした演技が目立ちました。我當が今月ここでの一役だけというのももったいない気がしました。



源平布引滝
一、義賢最期(よしかたさいご)
           
木曽先生義賢  片岡愛之助
九郎助娘小万  市川笑三郎
待宵姫     坂東新悟
進野次郎    坂東薪車
百姓九郎助   松本錦吾
葵御前     市川春猿
下部折平実は多田蔵人行綱  中村獅童



  銘作左小刀
二、京人形(きょうにんぎょう)
             
左甚五郎  市川右近
女房おとく 市川笑三郎
娘おみつ実は井筒姫  市川春猿
奴照平  市川猿弥
京人形の精  市川笑也



三、江戸ッ子繁昌記(えどっこはんじょうき)
  御存知 一心太助

        
一心太助徳川家光  中村獅童
女房お仲    市川亀治郎
鳥居甲斐守   片岡愛之助
用人喜内    市川右近
大久保彦左衛門 市川猿弥
侍女豊乃    上村吉弥
鮨勝      坂東薪車
信濃屋五郎兵衛 松本錦吾
柳生十兵衛   市川門之助
御台所     市川高麗蔵
酒井忠勝    大谷友右衛門
松平伊豆守   片岡我當