5/15 前進座八十周年記念@国立劇場 「唐茄子屋」「口上」「秋葉権現廻船噺」

5/15に国立劇場での前進座の80周年記念公演を観てきました。前進座を観たのは芳三郎の襲名公演以来、2回目です。


「唐茄子屋」
落語の「唐茄子屋政談」は寄席で一回聞いたことがあるのと、CDで聞いたことがあります。落語では前半しかやらないことが多いみたいですね。


女房おとめが女優のいまむらいづみというのが最初ちょっとびっくりしたのだけど、うまいので観ているうちにすぐに気にならなくなりました。伯父を演じた吉次郎とふたりとも世話物らしい江戸時代の気のいい夫婦といった自然な雰囲気を出していて、こういったところは前進座の得意なところなのだろうなと思いました。糸屋やいろいろな売り声がかかるところは江戸時代っぽくってよかったです。


主人公の徳三郎を演じる芳三郎が、いかにも落語に出てくるナヨっとした頼りない若旦那という柔らかい感じでよかった。いい話なので、観ていて気分がよかったです。


伊勢屋の倅徳三郎 嵐芳三郎
伯父六兵衛 村田吉次郎
その女房おとめ いまむらいづみ




「口上」
梅之助さんを中心に主なメンバーがずらりと並んでの口上。華やかでした。ただ、退団した中村梅雀や瀬川菊之丞がいないのがちょっとさびしい気もしました。




秋葉権現廻船噺」
秋葉権現というのが、火伏せの神様で秋葉原とも関係があるというのはイヤホンガイドのおかげで知りました。そういえば、落語の「牛ほめ」でも秋葉様のお札というのが出てきますね。


序幕の第一場はパンフレットにはあらすじが書かれていましたが、紙がはさみこんであり、「演出の都合により預かりとさせていただきます。」とのことで、やらずに第二場から始まりました。イヤホンガイドの方のブログによると、どうやら長かったのでばっさりカットしたみたいです。
http://blog.livedoor.jp/eggm2005/archives/51253083.html


序盤、ちょっと歌舞伎の雰囲気っぽくない役者の方がいたりして、ちょっと違和感があったのですが、嵐圭史河原崎國太郎などが出てきてからだんだんテンポもよくなって面白くなってきました。


話自体は、白波五人男よりも前に作られた話ということで、善人方に玉島逸当という名前の人がいたり、日本駄右衛門が上使に化けてきたのが正体を見破られるところなどは弁天小僧に引き継がれているらしいです。嵐圭史の駄右衛門がさすが立派でした。


玉屋の場では、歌舞伎の定番の展開ですが、最後にお才が本心を告白するまで非常に面白く観ることができました。國太郎の悪婆が、悪い場面と本心を現わしたところの演じ分けがうまく、とてもよかったです。


そのほかの役者さんでは、松ヶ枝を演じた山崎辰三郎が、脇でいい雰囲気を出して舞台を引き締めていました。この人は座っているだけでも、松竹でいうと、ちょっと東蔵なんかのような存在感がありました。

最後の場面、大詰は足柄山の場ということで、駄右衛門がマサカリを使っての立ち回りでダイナミックでした。ただ、立ち回りにからむ役者さん達が、いちおうトンボも切るのですが、普段見慣れている歌舞伎と比べるとちょっとタイミングや間の取り方なんかがいまひとつな感じもしました。最後は梅之助が出てきて、圭史が三段の上に上って見得で幕。


七十数年ぶりの上演とのことですが、面白かったので、今後はもっと上演したらいいんじゃないかと思いました。劇団の財産なんだろうけど、時代の場面と世話の場面があって、登場人物もいろいろいるので、松竹でやったら面白いかもしれません。前進座はもっと歌舞伎の上演回数を増やしたらいいのにと思いました。



日本駄右衛門 嵐圭史
月本円秋 武井茂
月本始之助 高橋佑一郎
玉島逸当 山崎竜之介
妻 松ヶ枝 山崎辰三郎
小森新吾右衛門 渡会元之
月本祐明 藤川矢之輔
島村又九郎 松浦豊和
広瀬軍蔵 松涛喜八郎
牙のお才 河原崎國太郎
早飛実は奴浪平 中嶋宏幸
松村監物 益城
傾城花月 生島喜五郎
久留米信濃之助 中村梅之助