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超歌舞伎の歌舞伎演出のちょっとした解説的な振り返り

歌舞伎

超歌舞伎は映像が使われて初音ミクと共演するところや両脇の画面に生放送のコメントが流れるところが斬新でしたが、ほとんどが歌舞伎の義経千本桜の狐忠信の場面を中心に、歌舞伎好きにはおなじみのオーソドックスな歌舞伎の手法が使われていましたので、ちょっと振り返ってみます。


最初は中村獅童の口上。幕開きはチョーンという柝の音から片しゃぎりという口上の前に流れる鳴り物で始まります。片しゃぎりは口上のほかには、能狂言を元にした松羽目物というジャンルの演目の場合にも使われます。


 とーざいー、とざい、とーざいーの東西声獅童が顔を上げます。口上以外で東西声がかかるお芝居としては仮名手本忠臣蔵が有名です。


口上でキャラクター設定と筋を説明するのは、今回、歌舞伎になじみがない人にもわかりやすいように説明を加えたのだと思いますが、歌舞伎の中でも伊達の十役という芝居では冒頭の口上で、パネルを使って登場人物とあらすじを説明するというのがあります。


初音ミクの登場はセリから上がってくるような映像で歌舞伎っぽかったですね。
隅から隅までずいーとーと、こい願い上げ奉ります―の間で一拍間が開くところで大向うが入るのが定番ですが、初音屋!と入れた人がいました。

 
映像をはさんで、黒衣が狐のぬいぐるみを操るのは、もともとは文楽から来ていますが、今年の1月には国立劇場で上演された「通し狂言 小春穏沖津白浪―小狐礼三―」では尾上菊之助が冒頭に狐のぬいぐるみを操る場面を見せました。


狐が引っ込むと入れ替わって中村獅童佐藤忠信の登場。この場の扮装は義経千本桜の道行の場の衣装。
佐藤忠信が持つ鼓は、義経千本桜の中では初音の鼓という、狐忠信の両親の皮で作られた鼓。


後見(黒衣)が蝶々を差し金で操るのも歌舞伎ならでは。今月歌舞伎座で上演されている楼門五三桐では鷹を黒衣が飛ばしています。


「千年前の様子、物語らん」と言って、回想シーンの映像に移りますが、歌舞伎の場合だと、文字通り、過去の出来事を義太夫の語りに合わせて役者が物語る場面のセリフ術と動きがひとつの見せ場になっています。


ミク姫との踊りの後、青龍の分身が登場し、忠信の衣装が一瞬で変わります。ぶっかえりという技法で、登場人物の本性が現れたことを表します。
この衣装は四の切の場をベースにしています。指先を丸めているのは狐手といって、狐であることを表しています。花道を引っ込むときは、狐六方。


そして、澤村國矢の青龍が登場。青い隈取をしていますが、歌舞伎では青や茶色の隈取りは悪人、赤は善のヒーローと決まっています。
ミクと青龍の、さあ、さあ、さあ、さあ、さあ、返事は何とー、という掛け合いは、問答で相手を追い詰めるときの歌舞伎の定番のセリフです。


その後、「待ーて、待ちやがれぇ」と声がかかって獅童が出てくるのは、押戻しなど正義の味方が花道から出てくるときの定番のセリフ。


花道で獅童と國矢が鳴り物といよー、いよーという声にあわせて、顔を左右に振って見得をするのは五つ頭といいます。
ここでの、獅童の忠信は鳥居前の場をベースにした衣装の拵え。持っている鎧は、義経千本桜では義経から賜ったものですが、この場では後ですぐ片付けちゃうので、見栄え良くするために持っているだけかな。


「ニコニコユーザーのコメントを得て、力いや増す上からは」と口上が入りますが、実際の歌舞伎でも暫の口上などで、「ご贔屓の皆さまのお力を得て」みたいなセリフが入ることがあります。


青龍の分身が槍を逆上がりして、それを獅童が下から手を上げて持ち上げるような形を見せるのは鳥居前などで使われる見得のひとつです。
梯子に登って見得をするのは蘭平物狂の立ち回りから。


國矢の青龍が毛振りで獅童を攻撃するのは、紅葉狩の鬼女などでも観られます。


最後に観客が総立ちになるのは、ワンピース歌舞伎の中でもありましたが、あれほどの盛り上がりになったのは、今回の超歌舞伎ならではですね。
改めて振り返ると、歌舞伎のオーソドックスな見せ場を盛り込みつつ、映像とのコラボがとてもうまくいっていたと思います。