1/15 壽 初春大歌舞伎@歌舞伎座

1月歌舞伎座は昼夜通しで観ました。

最初が「将軍江戸を去る」。大政奉還百五十周年と謳っているものの、なぜ、お正月の最初がこれなのかわかりません。
が、意外に面白かったです。最初の彰義隊の場面、いつもあまり面白いとも思わないのですが、歌昇、種之助、男寅、廣太郎らの若手がやることで、血気にはやるイメージが鮮明になり、幕末の殺伐とした雰囲気を出しました。
愛之助の山岡もなかなかセリフもよかった。慶喜との問答のところはやはりちょっと寝てしまったのですが、受ける染五郎も、慶喜は若かったんだなという感覚が、大御所がやるときと違って伝わってきて、いつもと違う見方ができました。

大津絵道成寺愛之助の五役演じ分けが面白かったです。女形をやる愛之助を観たのははじめてかも。
途中、常磐津の見台から出てきたケレンには驚きました。猿之助以外であれをやるとは。
その他では、種之助の犬が愛嬌があってかわいらしく、染五郎の押し戻しが立派でした。

1月の中で一番良かったのは、沼津。
吉右衛門歌六のやりとりが軽妙で、客席降りでも観客が沸く前半から、一転して悲劇となる後半。
吉右衛門のセリフが胸にしみるようで、歌六の最後も切ない。

夜の部の最初は井伊大老。これが予想外に面白かった。今までに何回か観たけれど、寝ないで観たのは初めてかも。
桜田門外の変は3月3日。お静の方と過ごしているのはその前日ということを今まであまり意識しないでいたのですが、筋書をじっくり読んだこともあって今回初めて、雛人形も、雪が降ってくるのも、翌日の悲劇につながっていることを感じて、なんとも言えない感じを抱きました。幸四郎の普段だと気になるセリフのくせなども気にならず、井伊直弼というのはこういう人だったんだろうなという史実らしさを感じました。玉三郎のお静の方も、この人らしい、古典では義太夫味が薄くなってしまうような感情表現も、この作品では活きているように感じました。

次が富十郎七回忌追善。鷹之資の踊りはきっちりしていて、この年齡で歌舞伎座でひとりで踊るには充分な出来だと思いました。将来が楽しみです。玉三郎の傾城は、とにかく美しかった。

最後は松浦の太鼓。これは染五郎の年齡ではきついなと感じました。もう少し年を取らないと、吉右衛門のような愛嬌は出ないで、ただのコメディのような雰囲気になってしまうと思いました。今後に期待したいと思います。


昼の部

大政奉還百五十年
真山青果
真山美保 演出
一、将軍江戸を去る(しょうぐんえどをさる)

徳川慶喜  市川染五郎
山岡鉄太郎 片岡愛之助
土肥庄次郎 大谷廣太郎
吉崎角之助 市川男寅
間宮金八郎 中村種之助
天野八郎  中村歌昇
高橋伊勢守 中村又五郎


河竹黙阿弥
二世藤間勘祖 構成
二、大津絵道成寺(おおつえどうじょうじ)
愛之助五変化

藤娘
鷹匠
座頭
船頭
大津絵の鬼 愛之助

弁慶 中村歌昇
犬  中村種之助
外方 中村吉之丞
矢の根の五郎 市川染五郎



伊賀越道中双六
三、沼津(ぬまづ)

呉服屋十兵衛 中村吉右衛門
お米     中村雀右衛門
荷持安兵衛  中村吉之丞
池添孫八   中村又五郎
雲助平作   中村歌六



夜の部

北條秀司 作・演出
一、井伊大老(いいたいろう)

井伊直弼   松本幸四郎
仙英禅師   中村歌六
長野主膳   市川染五郎
水無部六臣  片岡愛之助
老女雲の井  上村吉弥
宇津木六之丞 松本錦吾
中泉右京   市川高麗蔵
昌子の方   中村雀右衛門
お静の方   坂東玉三郎



   五世中村富十郎七回忌追善狂言
二、上 越後獅子(えちごじし)

角兵衛獅子 中村鷹之資

  下 傾城(けいせい)

傾城 坂東玉三郎


三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)

松浦鎮信 市川染五郎
大高源吾 片岡愛之助
お縫   中村壱太郎
宝井其角 市川左團次


http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/508