国立劇場 通し狂言 塩原多助一代記

千秋楽に行きました。チケット買った当初はまったく期待していなかったのですが、評判通り、地味ながらとても面白かったです。

事前に青空文庫で読んでおいたのですが、全体がすごく長くて、しかも多助の前の角右衛門の話がけっこうな分量を占めていましたが、芝居の方は同姓同名の塩原角右衛門が会って多助が養子になるところから始まりです。

二幕目はそれから14年後。三津五郎の多助が生真面目な人物がぴったりはまっていました。
その多助を不義の言いがかりで折檻する吉弥は多助をキセルでたたいたりグリグリ押し付けたり、嫌味な感じが非常によかったです。
三津之助の下男五八はいかにも田舎の実直で誠実な下男という感じで好演でした。

沼田在田圃道の場では、馬を引っ張る橋之助の「はい、はい、はいっ」というテンポがなんとも面白かったです。

見どころの愛馬の青との別れは、これも事前にネットなどで評判を聞いていた通り、青の演技が見事でした。耳も動き、まばたきもする馬で、本当に泣いているようにも見えました。最後は馬大和!の大向こうがかかりました。袖をかんで引っ張る様子には泣かされました。

昌平橋内戸田家中塩原宅の場では、親子の対面をせずに多助を追い返す團蔵が苦しい胸中が自然と伝わってくる演技で非常によかったです。
角右衛門の家の襖の漢詩は「十年曾一別征路此相逢馬首向何處夕陽千萬峰」、十年前に分かれた人に会ってまた分かれるというような意味のようで、この状況に合ったものが書かれているんだなあと後で調べて感心しました。http://www5a.biglobe.ne.jp/~shici/shi4_08/rs410.htm

最後は、結婚して、千両分の炭が届くというハッピーエンドで非常によい気分になりました。


三遊亭円朝=口演
三世河竹新七=作
国立劇場文芸課=補綴
通し狂言塩原多助一代記(しおばらたすけいちだいき) 六幕十一場
           国立劇場美術係=美術

       
   序  幕         上州数坂峠谷間の場   
   二幕目  第一場   下新田塩原宅門前の場
         第二場   同 奥座敷の場
         第三場   沼田在田圃道の場
         第四場   同 庚申塚の場
   三幕目  第一場   横堀村地蔵堂の場
         第二場   同 裏手の場
   四幕目         神田佐久間町山口屋店先の場
   五幕目         昌平橋内戸田家中塩原宅の場
   大 詰  第一場   本所四ッ目茶店の場
         第二場   相生町炭屋店の場


 坂 東 三津五郎
 中 村 橋 之 助
 中 村 錦 之 助
 片 岡 孝 太 郎
 中 村 松   江
 坂 東 巳 之 助
 中 村 玉 太 郎
 上 村 吉   弥
 河原崎 権 十 郎
 坂 東 秀   調
 市 村 萬 次 郎
 市 川 團   蔵
 中 村 東   蔵
            ほか