12/17 歌舞伎座「あらしのよるに」ほか

歌舞伎座12月第一部は南座で話題になったあらしのよるにの再演。
12/3に幕見、12/17に一階席で観ました。

開演前からまず目を引いたのは、花道と舞台に緑の芝生が敷かれていること。今までにない光景だけに面白く感じました。
また、一階席で見た時にわかったのですが、送風機が上手下手に設置されていて、嵐の場面と吹雪の場面で一階席の前の方だと風が吹いてくるのも面白い工夫だと思いました。

舞台は主役の獅童が持ち前の愛嬌を存分に発揮して、思い入れの強い主人公狼のがぶを熱演していました。
特に、ともだちなのにおいしそう、食いてーなー、食いてーなーという竹本のセリフに弥次喜多のときの出飛人を思わせるおかしな動きで身を悶えさせ、竹本に話しかけると竹本があっかんべーをするところなど、ちょっとやりすぎかなとも思いますが、面白かったです。
松也は中性的な演技でかわいらしいめいをうまく演じていました。

二人が客席に降りる場面、幕見のときはまったくなにをやってるのかわからず残念な思いをしたのですが、一階席で見た時は、客席の子どもさんのところで、「こんなところにかわいらしいお花が」なんて言ったりして、客席が盛り上がっているのを十分感じることができました。そういえば、この公演はいつになく親子連れが多かった気がします。

ほかの役者では、猿弥が持ち前の愛嬌で、流行語の「神ってる」をセリフの中にいれたりして、憎めない端敵を好演。
萬次郎は怪しいおばばがぴったり。こういう役をやらせたら右に出るものはいない感じになってきました。
竹松が下座でメリーさんの羊がかかったときに、僕たち山羊なんだけどなあって言うセリフが面白い。
権十郎が、この人にしては珍しい役だと思いますが、非常にかっこいいところを見せてくれました。

最後は獅童の幕外の六方での引っ込み。六方の前、拍手がなかなかなりやまず、獅童も感動しているようでした。

第二部の吹雪峠は中車がなかなかよかった。この人はこういう新歌舞伎を持ち役としていくといいかもしれないと思いました。

寺子屋は若手なので、納涼歌舞伎のように感じました。健闘してはいたけれど、重厚感がなく、あっさりしていたのが残念。
その中では七之助の千代と梅枝の戸浪が良かった。特に寺入りが付いているので、千代の悲しみがうまく表現されていて感心しました。

第3部、二人椀久は幻想的。人ならぬものを演じさせたら玉三郎の右に出るものはないですね。登場して振り返った時の様子はぞくぞくするほどでした。
勘九郎は狂った感じは弱めでどちらかというと健康的。最後は寝転がらずに終わりました。

五人道成寺は前の歌舞伎座の閉場式以来の演目で本公演としては初。とにかく美しいの一言で目がいくつあっても足りないほどでした。中でも勘九郎七之助の二人が素晴らしかった。


第一部

きむらゆういち 原作(講談社刊)
今井豊茂 脚本
藤間勘十郎 演出・振付
新作歌舞伎
一、あらしのよるに

がぶ     中村獅童
めい     尾上松也
みい姫    中村梅枝
たぷ     中村萬太郎
はく     市村竹松
山羊のおじじ 市村橘太郎
ばりい    市川猿弥
がい     河原崎権十郎
狼のおばば  市村萬次郎
ぎろ     市川中車



第二部

宇野信夫
坂東玉三郎 演出
石川耕士 演出
一、吹雪峠(ふぶきとうげ)

直吉  市川中車
助蔵  尾上松也
おえん 中村七之助



二、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

寺子屋
寺入りよりいろは送りまで

松王丸    中村勘九郎
武部源蔵   尾上松也
戸浪     中村梅枝
園生の前   坂東新悟
涎くり与太郎 市川弘太郎
下男三助   市川寿猿
春藤玄蕃   市川猿弥
千代     中村七之助



第三部

一、二人椀久(ににんわんきゅう)

松山太夫  坂東玉三郎
屋久兵衛 中村勘九郎



二、京鹿子娘五人道成寺(きょうかのこむすめごにんどうじょうじ)

道行より鐘入りまで
白拍子花子 坂東玉三郎
白拍子花子 中村勘九郎
白拍子花子 中村七之助
白拍子花子 中村梅枝
白拍子花子 中村児太郎
所化    坂東亀三郎
同     中村萬太郎
同     市村橘太郎
同     中村吉之丞


http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/504