10/9、10/23 通し狂言仮名手本忠臣蔵第一部@国立劇場

国立劇場50周年の仮名手本忠臣蔵3か月通し上演企画の第一部を2回観ました。

普段の通しでは出ない、二段目、三段目の裏門、四段目の花献上が出るのが見どころ。

大序では、左團次が慣れた役だけあって大きな存在感があり、梅玉の判官と錦之助の若狭之助は両方共さわやかさがあってバランスが取れた配役だと思いました。松江が直義というのは若干無理があるかなあと思っていましたが、やはり台詞回しに不満が残りました。
それと、今回初めて気づいたのですが、附け打ちさんも最初は役者と同じように下を向いていました。こういうところの様式美も含めて厳粛な雰囲気の大序は見ごたえがありました。

二段目は平成中村座仁左衛門が本蔵をやったときに観たことがあります。
地味な場面ではあるけど、ここを見てると、九段目か楽しみになる場面です。力弥使者では、隼人と米吉が初々しい美男美女なのが非常によかったです。
松切りの場は、團蔵の本蔵が落ち着いてしっかりした家老らしい雰囲気があって短気な若狭之助と対称的で非常によかった。
平成中村座と違っていた点として、松は平成中村座では上手にあったのが、下手で大きさも少し小さめ、最後に平成中村座仁左衛門は馬に乗るところまでやりましたが、今回は馬引けと言って、家来に馬を取りに行かせ、中央で團蔵がこれから行くぞという雰囲気を見せたところで終わりました。
後の場の、進物の場も判官の抱き止めも無精をせずに團蔵が出てきたのもよかったと思います。
これならば、團蔵の本蔵のままで九段目が観てみたいと思いました。

三段目の門前は橘太郎がさすがにうまいおかしみを見せてよかったです。
また、いつもと違って、門前の場にも勘平とおかるが出てきて、さらに裏門の場もあるので、勘平が大事な時におかるといちゃいちゃしてて大事なところに居合わせなかったという、後の悲劇につながるところがよくわかりました。
扇雀は最近、女形より立役でなかなかいいところを見せていると思います。
文使いというとおり、おかるが文箱を持ってくるので、四段目で判官がその文箱を持って登場するのにつながります。

四段目の判官切腹の場は梅玉が素晴らしかった。場内もシーンと静まっていていい感じでした。
ただ、その大序からずっと積み重ねてきた芝居の雰囲気が幸四郎が出てきたところから一気に高麗屋色に染まってしまうのがちょっと惜しいところ。
ここが吉右衛門仁左衛門だったらなあと感じてしまうのは正直なところでした。
とはいえ、城を後にして去っていく幸四郎の由良之助には大きさもあり、最終的には満足して充実した観劇でした。




通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)【第一部】 四幕九場

大序  鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目 桃井館力弥使者の場
    同   松切りの場
三段目 足利館門前の場
    同   松の間刃傷の場
    同   裏門の場
四段目 扇ヶ谷塩冶館花献上の場
    同   判官切腹の場
    同   表門城明渡しの場

(主な配役)
【大序】
塩冶判官    中村梅玉
顔世御前    片岡秀太郎
足利直義    中村松江
桃井若狭之助  中村錦之助
高師直     市川左團次

【二段目】
桃井若狭之助  中村錦之助
本蔵妻戸無瀬  市村萬次郎
大星力弥    中村隼人
本蔵娘小浪   中村米吉 
加古川本蔵   市川團蔵

【三段目】
塩冶判官    中村梅玉
早野勘平    中村扇雀
桃井若狭之助  中村錦之助
鷺坂伴内    市村橘太郎
腰元おかる   市川高麗蔵
加古川本蔵   市川團蔵
高師直     市川左團次

【四段目】
大星由良之助    松本幸四郎
石堂右馬之丞    市川左團次
薬師寺次郎左衛門  坂東彦三郎
大鷲文吾      坂東秀調
赤垣源蔵      大谷桂三
織部安兵衛     澤村宗之助
千崎弥五郎     市村竹松
大星力弥      中村隼人
佐藤与茂七     市川男寅
矢間重太郎     嵐橘三郎
斧九太夫      松本錦吾
竹森喜多八     澤村由次郎
原郷右衛門     大谷友右衛門
顔世御前      片岡秀太郎
塩冶判官      中村梅玉

http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2016/10174.html