国立劇場 文楽二月公演 第二部「桜鍔恨鮫鞘 鰻谷」「八代豊竹嶋大夫引退披露狂言 関取千両幟」、第三部「義経千本桜 渡海屋・大物浦 道行初音旅」

文楽二部と三部を観てきました。


鰻谷は東京では45年ぶりの上演だそうです。
歌舞伎オンザウェブで調べたところ、歌舞伎では1980年に朝日座で13代目仁左衛門と我童でやって以来、出ていません。


夫に必要な金を工面するために、持参金つきの婿を迎えて夫に縁切りをして、そのせいで夫に殺されてしまう。
読み書きができないので娘に覚えさせていた書置きで真実が明らかになるという何ともやりきれない可哀そうな話。


勘十郎の女房お妻が苦しい感情が表れていてとてもよかったです。
最初にのれんをかきわけて顔を出すところから、心に悩みを抱えている雰囲気がよく出ていて、愛想尽かしをする場面も本心を心に隠して苦しんでいる様子が胸に迫りました。
殺しの場面での咲大夫の語りも切迫した迫力があり、娘お半が書置きを語るところは聞いてて苦しくなるようでした。


悲しい話だけど、歌舞伎でも一度観てみたいと思いました。


嶋大夫引退披露狂言の関取千両幟。過去に歌舞伎と文楽で一度ずつ観たことがあります。


最初に嶋大夫、寛治、呂勢大夫が床に並んで、呂勢大夫の口上がありました。
文楽は歌舞伎に比べてあまり観ていないので、大夫のうまさというものを正確にはわかっていないのですが、一門の弟子たちと並んで語る嶋大夫を聞いていると、さすがに他の大夫たちとは格が違うというのがはっきりわかりました。正直、引退するのがもったいないという気がしました。


寛太郎の曲弾きは、撥をひっくり返して持ち手の方で弾いたり、三味線を上に持ち上げて弾いたり、三味線を逆さに立てて弾いたり、撥を使わずに左手だけで弾いたり、三味線に乗せた撥を上に放ってキャッチしたり、撥で胴をたたいて音を出したり、いろいろやって面白かったです。途中で糸が切れたらしく、すぐに代わりの三味線が出されてました。
相撲の場面で鉄ヶ嶽が琴バウアーのように体を反らせていたのが面白くて客席がわきました。


最後は、嶋大夫が床に残って深くおじぎをして、そのまま床が回りました。引退は残念です。


第三部の最初は渡海屋・大物浦。歌舞伎といろいろと違うところがあるので、比較して楽しめました。
銀平が出てくるときに、碇を担いで出てくるのは、歌舞伎でもやったことがある人がいるようですが、観たことがないので、雰囲気が違って面白いと思いました。


歌舞伎と違って着替えがないので、場面の進行はスムーズ。歌舞伎だと場面が変わりますが、渡海屋で義経と知盛、典侍局のやり取りが行われて、その後、知盛が船で岩場に碇を持ってたどり着いて入水します。勘十郎の知盛が、手足を大きく動かしての動きがかっこよく、最後の飛び込む場面は勢いよく飛び込んで迫力がありました。歌舞伎がいろいろと工夫をしているんだなということを改めて感じました。千歳大夫の語りも豪快で盛り上がりました。


道行初音旅は、歌舞伎に比べて、静御前と忠信が二人で踊るところが多く、動きも大きいので面白かったです。
軍物語や錣引きのところも二人でやって、継信が弓で射られるところで静御前が投げた扇を忠信がキャッチしたり、華やかでした。<第二部>
桜鍔恨鮫鞘(さくらつばうらみのさめざや)
鰻谷の段

豊竹松香大
野澤喜一朗


豊竹呂勢大夫
鶴澤清治

豊竹咲大夫
鶴澤燕三


香具屋弥兵衛 吉田勘市
てんぽの十兵衛 吉田蓑紫郎
お妻の母 吉田蓑一郎
女房お妻 桐竹勘十郎
娘お半 吉田蓑次
古手屋八郎兵衛 吉田和生
仲仕銀八 吉田玉志





八代豊竹嶋大夫引退披露狂言
関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)
猪名川内より相撲場の段


おとわ 豊竹嶋大夫
猪名川 豊竹英大夫
鉄ヶ嶽 竹本津國大夫
北野屋 豊竹呂勢大夫
大阪屋 豊竹始大夫
呼遣い 豊竹睦大夫
行司  豊竹靖大夫


猪名川内 鶴澤寛治
相撲場  竹澤宗助
曲弾き  鶴澤寛太郎
胡弓   野澤錦吾


猪名川 吉田玉男
鉄ヶ嶽 吉田文司
女房おとわ 吉田蓑助
大阪屋 桐竹勘介
呼遣い 吉田和馬
行司 吉田玉路
北野屋 吉田玉志<第三部>
義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
渡海屋・大物浦の段


豊竹靖大夫
竹澤宗助

豊竹睦大夫
野澤錦糸


竹本千歳大夫
豊沢富助

女房おりう実は典侍局 豊松清十郎
武蔵坊弁慶 吉田蓑一郎
娘お安実は安徳天皇 桐竹勘次郎
相模五郎 吉田玉佳
渡海屋銀平実は中納言知盛 桐竹勘十郎
亀井六郎 吉田文哉
駿河次郎 桐竹紋秀
船頭 吉田蓑之
入江丹蔵 吉田玉勢


道行初音旅

静御前 竹本津駒大夫
狐忠信 豊竹芳穂大夫
ツレ  豊竹咲寿大夫
    竹本小住大夫
    豊竹亘大夫

竹澤團七
鶴澤清志郎
鶴澤清丈
鶴澤清公
鶴澤燕二郎

静御前 吉田文昇
狐忠信 吉田勘弥


http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2015/21025.html