10月新橋演舞場「勧進帳」「国性爺合戦」「御所五郎蔵」

13日に夜の部、21日に昼の部を観てきました。

勧進帳は昼夜で弁慶と富樫を入れ替えての配役で面白い企画なので期待していたのですが、昼夜とも勧進帳よりももう一本の演目で梅玉がよかったのが印象に残りました。


勧進帳は、幸四郎の富樫を楽しみにしていましたが、思ったより面白くありませんでした。
富樫というと、富十郎菊五郎梅玉仁左衛門海老蔵、などいろいろな人で観て、颯爽とした印象があるのですが、幸四郎の富樫は、セリフも動きも重々しく、ちょっと独特な感じがしました。
團十郎と一緒に出ていると、弁慶が二人いるような感じを受けました。
それで、二人がぶつかり合って火花を散らしているかというとそうではなく、富樫が弁慶の演技を受けて演じているのではないので、舞台上に主役が二人いるようで、山伏問答なども丁々発止のやりとりになっていなかったのが残念でした。
團十郎の弁慶はやや疲れていたように見えて、声も出ていませんでした。勧進帳を昼夜というのは企画としては面白かったのですが、いまひとつだったのではないでしょうか。


夜の方がどちらかというと、よかったように思いました。
幸四郎の弁慶は細かく表情を変えたりしすぎなところが、あまり好きではありませんが、さすがに立派でした。
友右衛門の亀井は最近定番だなあと思っていたら、四天王のうちでは亀井しか勤めていないと筋書に書いてありました。

藤十郎が昼夜義経で、花道の出で、杖をつく音をカツンカツンとさせながら出てくるのが独特でした。


御所五郎蔵の五條坂仲之町の場では、梅玉が立派で、松緑も悪くなかったのですが、やはり年齢と風格が違うので、両者が火花を散らしている感じには見えませんでした。
やはりこれは、松緑染五郎で観たかった気がします。
いつもは出ない五郎蔵が腹を切る場面が出るので、廓内夜更で幕が締まった後、土右衛門がすっぽんから出てきて仁木のような引っ込み。松緑の不敵な表情で悠々と引っ込んでいく様子がとてもよかったです。腹切りの場面はなかなか面白かったです。
芝雀は昼夜とも自害する役なのが気の毒な感じもするけれど、哀れな役がよく似合います。


昼の部の国性爺合戦を観るのは3回目です。最初は吉右衛門が和藤内、2回目は国立劇場團十郎が和藤内でした。国立劇場のときは、大明御殿の場があって、翫雀の李踏天が印象的でした。
今回のを観て、梅玉の甘輝が立派なのが印象に残りました。国立のときもよかったのですが、勇将というよりも、文武両道兼ね備えた武将という感じで、三国志に出てきそうだなと思いました。
芝雀がとても綺麗で、獅子ヶ城楼門に最初に出てきたとき、雀右衛門に似てるなあと思いました。
秀太郎の渚は唐猫のところでは強い愛情を感じました。
松緑の和藤内の紅流しのところは、笠をあげて顔を見せるところは顔が小さいのが損してるなあという感じがしましたが、元の甘輝館で甘輝と対峙する場面は腰を割ってぐっと力が入った姿が立派でした。


今回のを観て、秀太郎芝雀歌六がとてもよかったので、和藤内が主役というより、家族の話なんだなあという感じを受けました。

でもこの話、最後に衣裳を変えて終わりというのがいつも物足りなく感じます。猿翁がやった通しで観たらもっと面白いのでしょうか。観てみたい気がします。


昼の部


一、国性爺合戦(こくせんやかっせん)
  獅子ヶ城楼門
  獅子ヶ城内甘輝館
  同 紅流し
  同 元の甘輝館

                    和藤内  尾上松緑
                    錦祥女  中村芝雀
                    老一官  中村歌六
                      渚  片岡秀太郎
                     甘輝  中村梅玉



二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
                  武蔵坊弁慶  市川團十郎
                  富樫左衛門  松本幸四郎
                   亀井六郎  大谷友右衛門
                   片岡八郎  市村家橘
                   駿河次郎  市川右之助
                  常陸海尊  片岡市蔵
                    源義経  坂田藤十郎




夜の部 


一、曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
  御所五郎蔵
  五條坂仲之町
  甲屋奥座敷
  廓内夜更
  五郎蔵内腹切

                  御所五郎蔵  中村梅玉
                 星影土右衛門  尾上松緑
                     逢州  市川高麗蔵
                   梶原平平  坂東亀寿
                   新貝荒蔵  大谷廣太郎
                   秩父重介  中村米吉
                  二宮太郎次  大谷廣松
                     皐月  中村芝雀
                  甲屋与五郎  松本幸四郎



二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
                  武蔵坊弁慶  松本幸四郎
                  富樫左衛門  市川團十郎
                   亀井六郎  大谷友右衛門
                   片岡八郎  中村翫雀
                   駿河次郎  市川高麗蔵
                  常陸海尊  松本錦吾
                  太刀持音若  松本金太郎
                    源義経  坂田藤十郎