10月18日 国立能楽堂 万作を観る会
だいぶたってしまいましたが、狂言の感想。
すごかったです。
「釣狐」は狂言の世界で「猿に始まり、狐に終わる」とか、「狂言の卒業論文」とかいわれる大曲だそうです。
人間国宝の野村万蔵が、最後というつもりで演じた前回から16年ぶりに、面や衣装をつけない袴狂言で、前半だけを演じるというもの。
ストーリーは、仲間を猟師のわなでほとんど捕まえられてしまった老狐が、罠をやめさせるため、猟師の伯父に化けて、狐は執念深い獣だからやめるようにと説得しにくる。
うまく猟師に罠を捨てさせるが、罠についている油揚げが食べたくなってしまう、という話。
狐が化けているので、突然奇声を上げたり、急に姿勢を変えたり、ジャンプしたり、78歳とは思えない動き、若い人がやってもきついというもので、後半は荒い息遣いが聞こえてきました。
普段、狂言は客席もほんわかした笑いに包まれているのですが、観客も、最後の釣狐を一瞬も見逃すまいと、緊迫感、集中感がすごかった。
もちろん動きだけでなく、猟師にわなを捨てさせるために必死に説得する様子の緊迫感といい、捨てさせたわなの油揚げを食べたくなってしまう場面のユーモアといい、生き物の持ついろんなパワーが表現されていて、客席に伝わってくる感じでした。さすが人間国宝です。
狂言は歌舞伎ほど回数を見ていないので、あまり何とも言えないのですが、感動しました。
連吟 鳴子
破石普照、竹山悠樹、深田博治、高野和憲、月崎晴夫
素囃子 安宅 瀧流
大鼓 亀井忠雄、小鼓 幸正昭、笛 一噌仙幸
袴狂言 釣狐 前
白蔵主 野村万作、猟師 野村萬斎、後見 石田幸雄、深田博治