12/11、12/25 12月歌舞伎公演「通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」第三部@国立劇場

三ヶ月連続公演の忠臣蔵も最後の月。三ヶ月通してみて、充実感はありました。

八段目、国立劇場の台本は後ろの方に言葉の説明が載っていて、歌詞の掛詞なども解説されていたので、台本を見ながら鑑賞しました。

九段目、あまり出ないという雪転しから出たので、七段目の雰囲気を引き継いでいる感じがよく出ていて面白いと思いました。
梅玉の由良之助が酔ったふりで寝転がって、力弥には正気になって話をするのも、七段目を思わせました。
先日文楽を見たばかりなので、文楽とは舞台装置の上下が反対なのが面白いと思いました。
九段目だけを見ていたときはなんとも思わなかったのですが、八段目でわざわざ供をもつれず二人連れにしているのに、九段目の出でお供も駕籠もついてくるのはおかしいなと思いました。文楽ではそのまま二人だけだったので、歌舞伎の方での工夫なのでしょうが。
役者は全体的にまとまっていましたが、笑也のお石はさすがに無理があり、セリフが義太夫狂言になってませんでした。

十段目はめったに出ない段ということで、確かにストーリーとしては何てことはない話で、あまり出ないのも納得でしたが、歌六の天川屋義平がすごくかっこよかったです。文楽では荷物の中から由良之助が出てきますが、梅玉の由良之助は正面奥の戸を開けて出てきました。

十一段目、浅葱幕を切って落とすと四十七士が並んでいるのはやはり壮観。
今回はあまり出ない広間の場も出るので、米吉の力弥が男女蔵と立廻り。米吉は立役が珍しい上に、立廻りとなるとめったにないので貴重でしょう。
泉水の場は、松緑と亀寿の立廻りが見事。
焼香の場では、一番槍の矢間が最初、勘平の代わりに義兄の平右衛門が二番目、三番目に全員の名代として由良之助というのも非常によかった。
最後、花水橋で全員が若狭之助に向かって名乗るのはかっこよかったです。

竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第三部 四幕八場
        国立劇場美術係=美術

八段目   道行旅路の嫁入
九段目   山科閑居の場
十段目   天川屋義平内の場
十一段目  高家表門討入りの場
        同  広間の場
        同  奥庭泉水の場
        同  柴部屋本懐焼香の場
        花水橋引揚げの場

(主な配役)
【八段目】
本蔵妻戸無瀬  中村魁春
娘小浪     中村児太郎

【九段目】
加古川本蔵   松本幸四郎
妻戸無瀬    中村魁春
娘小浪     中村児太郎
一力女房お品  中村歌女之丞
由良之助妻お石 市川笑也
大星力弥    中村錦之助
大星由良之助  中村梅玉

【十段目】
天川屋義平    中村歌六
女房お園     市川高麗蔵
大鷲文吾     中村松江
竹森喜多八    坂東亀寿
千崎弥五郎    中村種之助
矢間重太郎    中村隼人
丁稚伊吾     澤村宗之助
医者太田了竹   松本錦吾
大星由良之助   中村梅玉

【十一段目】
大星由良之助   中村梅玉
大星力弥     中村米吉
寺岡平右衛門   中村錦之助
大鷲文吾     中村松江
竹森喜多八    坂東亀寿
千崎弥五郎    中村種之助
矢間重太郎    中村隼人
赤垣源蔵     市川男寅
茶道春斎     中村玉太郎
間喜兵衛    中村寿治郎
織部弥次兵衛   嵐橘三郎
織部安兵衛    澤村宗之助
高師泰      市川男女蔵
和久半太夫    片岡亀蔵
原郷右衛門    市川團蔵
小林平八郎    尾上松緑
桃井若狭之助   市川左團次
                  ほか

http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2016/12156.html

12/4 12月文楽公演『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』@国立劇場

文楽仮名手本忠臣蔵を通しで観ました。文楽忠臣蔵を見るのははじめて。
朝の10時半から夜の9時半ごろまでで、休憩時間も短く、体力勝負でしたが、観終わった後、充実感がありました。

歌舞伎と比べてみるといろいろ違いがあるのが面白かったです。
まず大序は歌舞伎のような儀式性はなく、普通に始まります。直義と師直だけでなく、塩冶判官も階段の上にいて、若狭之助は上手の段の下にいる。
イチョウの木の葉は黄色くなくて緑でした。

二段目、松切りの段、先日国立劇場では松が下手にありましたが、上手でした。
下馬先進物の段、門構えが歌舞伎より立派で堀もありました。
刃傷の場面は、廊下を横切るだけでなく、一旦幕を入った後、また帰ってきて距離感が歌舞伎よりありました。

四段目の切腹は場内が静まり返っていて、九寸五分に紙を巻く音も聞こえるくらいでした。
城明け渡しは、ずっと義太夫がなく、最後の一言のみ。緊張感があって、歌舞伎よりも面白いと思いました。

五段目は定九郎がよくしゃべるのが面白い。
六段目では、一文字屋お才と源六ではなく、男性一人のみ。

七段目、平右衛門を語る義太夫が下手に一人用の床に座って、床本もなしで語るのが面白い。
一力茶屋は歌舞伎のほうが面白いかなと思いました。
九段目、門と、竹やぶの位置関係が歌舞伎と逆で、上手から戸無瀬、小浪が入ってくる。

十段目の由良之助は葛籠の中に隠れていた体でそこから出てくるのが歌舞伎と違う。
最後は引き上げで終了。<第一部>午前10時30分開演
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
大  序   鶴が岡兜改めの段・恋歌の段
二段目   桃井館本蔵松切の段
三段目   下馬先進物の段・腰元おかる文使いの段・
       殿中刃傷の段・裏門の段
四段目   花籠の段・塩谷判官切腹の段・城明渡しの段
五段目   山崎街道出合いの段・二つ玉の段
六段目   身売りの段・早野勘平腹切の段<第二部>午後4時30分開演

通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
七段目   祇園一力茶屋の段
八段目   道行旅路の嫁入
九段目   雪転しの段・山科閑居の段
十段目   天河屋の段
十一段目 花水橋引揚の段


http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2016/12155.html

11/20 吉例顔見世大歌舞伎 中村橋之助改め 八代目 中村芝翫 襲名披露@歌舞伎座

襲名披露二ヶ月目、襲名演目は四人連獅子と盛綱陣屋。
盛綱陣屋は、数年前に見た仁左衛門の盛綱、吉右衛門の和田兵衛が素晴らしかったので、どうしてもそれと比べると見劣りがします。
芝翫の盛綱はまずまずでしたが、声を張り上げるところで声のコントロールの仕方、抑揚の付け方がうまくできていないで、絶叫調になってしまうのが欠点かと思いました。幸四郎の和田兵衛が見た目が立派でした。

四人での連獅子は豪華できれいでした。しかし、四人で毛振りすると、素人目にもどうしても三男あたりの下半身の安定感のないところが目に付いてしまいました。
経験もまだ少ないので今後頑張って欲しいと思います。そして、梅玉仁左衛門藤十郎が並ぶと本当に拝みたくなるほどの尊さを感じました。

染五郎の毛抜は、高島屋型。幸四郎に教わったということだけど、幸四郎は上演記録を見ると、一回しかやってないようだけど誰から教わったのだろう。染五郎は初演だからか、けっこうかっちり演じてるように見えました。もう少しおおらかさが出るといいかなと思います。

御浜御殿は仁左衛門のセリフの名調子にも関わらず、途中ちょっと寝てしまいました。苦手な演目の一つです。

口上は左團次が面白かった。「テレビを見ていますと、芝翫さんが出ておりまして、何か色恋沙汰でうらやましく思いました」とかいう内容でした。
芝翫自身の口上はすごく力が入っていて、気迫を感じました。

芝翫奴は幕見を利用して三人とも見ましたが、やはりうまさは年齢順で、橋之助がやったことがあるので一日の長があり、歌之助は踊りの基礎がまだまだだなあという感じでした。


中村橋之助改め 八代目 中村芝翫 襲名披露
  中村国生改め 四代目中村橋之助     
  中村宗生改め 三代目中村福之助 襲名披露
  中村宜生改め 四代目中村歌之助     
吉例顔見世大歌舞伎

昼の部

一、四季三葉草(しきさんばそう)

翁   中村梅玉
千歳  中村扇雀
三番叟 中村鴈治郎

     
二、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)

粂寺弾正    市川染五郎
秀太郎    尾上松也
腰元巻絹    中村梅枝
小野春風    中村萬太郎
八剣数馬    大谷廣太郎
錦の前     中村児太郎
小原万兵衛   中村亀鶴
小野左衛門春道 市川門之助
秦民部     市川高麗蔵
八剣玄蕃    坂東彌十郎



     河竹黙阿弥 原作より
今井豊茂 脚本
三、祝勢揃壽連獅子(せいぞろいことぶきれんじし)

狂言師後に親獅子の精 中村橋之助改め芝翫
狂言師後に仔獅子の精 中村国生改め橋之助
狂言師後に仔獅子の精 中村宗生改め福之助
狂言師後に仔獅子の精 中村宜生改め歌之助

長楽坊     中村萬太郎
萬年坊     尾上右近
昌光上人    中村梅玉
慶雲阿闍梨   仁左衛門
文殊菩薩    藤十郎



河竹黙阿弥
盲長屋梅加賀鳶
四、加賀鳶(かがとび)
本郷木戸前勢揃いより
赤門捕物まで


神町梅吉/竹垣道玄 松本幸四郎
女按摩お兼      片岡秀太郎
春木町巳之助     市川染五郎
魁勇次        尾上松也
虎屋竹五郎      坂東巳之助
磐石石松       尾上右近
お朝         中村児太郎
数珠玉房吉      中村国生改め橋之助
御守殿門次      中村宗生改め福之助
昼ッ子尾之吉     中村宜生改め歌之助
道玄女房おせつ    中村芝喜松改め梅花
おつめ婆       中村歌女之丞
伊勢屋与兵衛     松本錦吾
金助町兼五郎     市川男女蔵
妻恋音吉       中村松江
天狗杉松       片岡亀蔵
御神輿弥太郎     大谷友右衛門
雷五郎次       市川左團次
日蔭町松蔵      中村梅玉




夜の部

真山青果
真山美保 演出
一、元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)
御浜御殿綱豊卿

徳川綱豊卿   片岡仁左衛門
富森助右衛門  市川染五郎
中臈お喜世   中村梅枝
中臈お古宇   澤村宗之助
津久井九太夫  市村橘太郎
小谷甚内    片岡松之助
上臈浦尾    坂東竹三郎
御祐筆江島   中村時蔵
新井勘解由   市川左團次



八代目中村芝翫 四代目中村橋之助 三代目中村福之助 四代目中村歌之助 襲名披露 口上(こうじょう)


橋之助改め芝翫
国生改め橋之助
宗生改め福之助
宜生改め歌之助
藤十郎
     幹部俳優出演

近江源氏先陣館
三、盛綱陣屋(もりつなじんや)

佐々木盛綱  中村橋之助改め芝翫
篝火     中村時蔵
伊吹藤太   中村鴈治郎
早瀬     中村扇雀
信楽太郎   市川染五郎
四天王    中村萬太郎
同      市村竹松
同      尾上右近
同      大谷廣太郎
小四郎    尾上左近
古郡新左衛門 坂東秀調
竹下孫八   坂東彌十郎
北條時政   坂東彦三郎
微妙     片岡秀太郎
和田兵衛秀盛 松本幸四郎



四、芝翫奴(しかんやっこ)


奴駒平
国生改め橋之助(1日〜9日)
宜生改め歌之助(10日〜17日)
宗生改め福之助(18日〜25日)


http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/491

11/3・11・23 11月歌舞伎公演「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」第二部@国立劇場

仮名手本忠臣蔵の3ヶ月連続公演、11月は五、六、七段目。
普段やらない場が多かった10月と比べるとオーソドックスで、主役も菊五郎の勘平に吉右衛門の由良之助と当たり役。

最初の道行は菊之助錦之助のおかる勘平が美男美女でとてもきれいでした。
亀三郎は伴内のおかしみを出すにはかっこよすぎて伴内役者ではないなあと感じました。
余談ですが、パンフレットに詞章が全部載っているのはありがたかったです。

次いで五段目から六段目。菊五郎の勘平が若々しくて、やることが自然でさらさらしているようでいて、しっかりしているという円熟の芸。
松緑の定九郎は刹那的に生きる凄みがありました。

六段目もそれぞれ役者が揃って引き締まった舞台。特に團蔵の源六がまさに生世話で江戸から抜け出てきたよう。
歌六の原郷右衛門は初役だそうですが、重みがあり、非常に良かった。

七段目は、斧九太夫と伴内の入りから見せる丁寧な形。
見立ては11月3日は文化の日にちなんだ二重橋
種之助の力弥が思いの外、柔らかみがあって意外でした。
又五郎の平右衛門と雀右衛門のおかるは兄妹の仲の良さが伝わってきました。
吉右衛門の由良之助はさすがの貫禄、本当に由良之助がそこに実在しているかのような感じを受けました。
これを見て、次世代の由良之助役者って誰がいるかなあと考えてみましたが、芝翫染五郎松緑海老蔵あたりかなあとは思うものの、吉右衛門のような雰囲気を出すのは容易ではないだろうなと思いました。


平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)【第二部】 四幕五場
国立劇場美術係=美術


浄瑠璃 道行旅路の花聟 清元連中
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
      同   二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場
七段目 祇園一力茶屋の場

【道行旅路の花聟】
早野勘平      中村錦之助
鷺坂伴内      坂東亀三郎
腰元おかる     尾上菊之助

【五段目】
早野勘平      尾上菊五郎
千崎弥五郎     河原崎権十郎
斧定九郎      尾上松緑

【六段目】
早野勘平      尾上菊五郎
原郷右衛門     中村歌六
勘平女房おかる   尾上菊之助
千崎弥五郎     河原崎権十郎
判人源六      市川團蔵
与市兵衛女房おかや 中村東蔵
一文字屋お才    中村魁春

【七段目】
大星由良之助    中村吉右衛門
寺岡平右衛門    中村又五郎
赤垣源蔵      坂東亀三郎
矢間重太郎     坂東亀寿
竹森喜多八     中村隼人
鷺坂伴内      中村吉之丞
斧九太夫      嵐橘三郎
大星力弥      中村種之助
遊女おかる     中村雀右衛門
        ほか

http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2016/11200.html

10/29 講談「勧進帳」・能「安宅」@国立能楽堂

国立能楽堂で、講談の勧進帳と能の安宅の二本立てという面白い企画を観ました。
講談の勧進帳も能の安宅もはじめてでした。

神田松鯉さんの勧進帳はめったにやらないので、八年ぶりとのことでしたが、見事でした。
問答と勧進帳の読み上げが聞き応えありました。

歌舞伎と違うなと思ったところがいくつか。富樫の名前がとがしのすけまさひろ。義経主従は十三人、番卒は三百人。問答が先で勧進帳読み上げが後といった違いが。

その後が能の安宅。
今回は、小書で問答と滝流しがあったので、想像していたよりは歌舞伎に近い感じがしました。
歌舞伎と大きく違うところとしては、義経が子方。かわいかったですが、セリフもしっかりしてました。プログラムを見たら、2008年生まれの8歳だとか。
あとは山伏の人数が多い。狭い能舞台に弁慶の他に山伏が六人もいると、迫力がありました。
富樫に詰め寄るのを弁慶が押さえるところでは、六人が飛び跳ねて床を踏み鳴らしたりして面白かった。
あとは、けっこう強力と太刀持ちのする事が多かったのは歌舞伎と違うなと思いました。
富樫は富樫某で名前がなく、歌舞伎と違って化粧しないから、歌舞伎より無骨な感じがしました。

あとで知ったのですが、弁慶は金剛流の宗家だったそうで、どうりで重厚な雰囲気だなあと思いました。
他の流派でも観てみたいなと思いました。

弁慶の衣装と子方の義経を観てたら、矢車会で観た富十郎さんの弁慶と鷹之資くんの義経を思い出したりもしました。


国立劇場開場50周年記念
平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催

◎古典の日記念1<安宅関の山伏問答>
講談  勧進帳(かんじんちょう)  神田松鯉

能  安宅(あたか)
    延年滝流(えんねんたきながし)
    問答之習(もんどうのならい)
    貝立貝付(かいたてかいつけ)   金剛永謹(金剛流

http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2016/10170.html

10/10 中村芝翫襲名@歌舞伎座 昼の部・夜の部

10月の中村芝翫襲名公演は昼の部と夜の部を通して観ました。

一番の注目は芝翫型の熊谷陣屋。私は新橋演舞場での初演と平成中村座で観たことがあるので三回目です。

よく言われているとおり、芝翫型の特徴は大きなところではまず、熊谷の見た目が赤っ面で衣装も文楽に近い形なこと。
また、有名な制札の見得が團十郎型と逆に制札が読める上向きに構えること、最後が幕外がなく引っ張りの見えで終わることや、さらに細かいことで言うと上手の障子が文楽と同じように斜めになっていることなどがあります。

それ以外にもいろいろ違いがあって、花道の出で七三で鐘がゴーンと鳴ったり、舞台へ来て相模がいることに気づいて階へ足をかけて相模の方をみたところでツケが入ったり、平山見得も扇を上に上げたり、藤の方を制して團十郎型なら体を斜め後ろに倒してよけるところを飛び上がったり、全体的に派手な感じがします。

そんな中でも面白いと思ったのは、首を相模に渡す時に、團十郎型と違って手渡しで渡すことです。相模と熊谷の手が触れ合って、お互いに子供のことを悲しんでいる情が感じられていい型だなと思いました。

芝翫の熊谷は骨太な力強い感じがよくて、芝翫型がよくあっていると思いました。ただ、声を張り上げるところで力が入りすぎて上ずった感じになってしまうのがよくないのでそこは直していってほしいところ。

ほかでは、吉右衛門義経が絶品。セリフも明瞭、御大将の風格、素晴らしいものでした。また、歌六の弥陀六が非常によく、舞台が引き締まりました。
最後の引っ張りの見得は、敵味方全員が争いの被害者であることを感じさせて、よいものでした。

10月で二番目によかったのは、玉三郎の藤娘。驚異的に若々しく、かわいらしい藤娘でした。

他、昼の部最初は、芝翫の息子三人による踊り。三人の船出を祝うおめでたい踊りでした。

女暫は、幕外での七之助松緑のやりとりが楽しかったです。

幡随長兵衛は、劇中劇が七之助、児太郎、亀三郎と役者も揃って非常に面白く、特に亀三郎の公平はそのまま一本荒事を観てみたいような気がしました。

夜の部最初の外郎売は、松緑が何度もやっているだけに安定の演技。

口上は、菊五郎が「奥さんにしかられながら」なんて不倫のネタを混ぜて場内の笑いを誘い、またこの日は先代芝翫の命日ということで七之助からそのような挨拶もあり、梅玉芝翫に禁煙を勧められて余計なお世話だといった楽しい雰囲気の口上でした。


中村橋之助改め 八代目 中村芝翫 襲名披露
  中村国生改め 四代目中村橋之助     
  中村宗生改め 三代目中村福之助 襲名披露
  中村宜生改め 四代目中村歌之助     
芸術祭十月大歌舞伎

昼の部

山口 晃 作
寛徳山人 作
一、初帆上成駒宝船(ほあげていおうたからぶね)

橋彦 中村国生改め橋之助
福彦 中村宗生改め福之助
歌彦 中村宜生改め歌之助


二、女暫(おんなしばらく)

巴御前     中村七之助
舞台番松吉   尾上松緑
轟坊震斎    尾上松也
手塚太郎    中村歌昇
紅梅姫     尾上右近
女鯰若菜    中村児太郎
局唐糸     中村芝喜松改め梅花
東条八郎    中村吉之丞
江田源三    坂東亀寿
猪俣平六    坂東亀三郎
成田五郎    市川男女蔵
清水冠者義高  河原崎権十郎
蒲冠者範頼   中村又五郎


三、お染 久松 浮塒鷗(うきねのともどり)

女猿曳 尾上菊之助
お染  中村児太郎
久松  尾上松也

     

河竹黙阿弥
四、極付 幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)
「公平法問諍」

幡随院長兵衛 中村橋之助改め芝翫
女房お時   中村雀右衛門
唐犬権兵衛  中村又五郎
伊予守源頼義 中村七之助
坂田公平   坂東亀三郎
御台柏の前  中村児太郎
極楽十三   中村国生改め橋之助
雷重五郎   中村宗生改め福之助
神田弥吉   中村宜生改め歌之助
下女およし  中村芝喜松改め梅花
舞台番新吉  中村吉之丞
坂田金左衛門 市川男女蔵
渡辺綱九郎  河原崎権十郎
出尻清兵衛  尾上松緑
近藤登之助  中村東蔵
水野十郎左衛門 尾上菊五郎


夜の部

平成28年度(第71回)文化庁芸術祭参加公演
野口達二 改訂
一、歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり)
外郎売実は曽我五郎     尾上松緑

大磯の虎     中村七之助
曽我十郎     坂東亀三郎
小林妹舞鶴    尾上右近
化粧坂少将    中村児太郎
近江小藤太    中村宗生改め福之助
八幡三郎     中村宜生改め歌之助
茶道珍斎     中村吉之丞
小林朝比奈    坂東亀寿
梶原景時     市川男女蔵
工藤祐経     中村歌六



八代目中村芝翫 四代目中村橋之助 三代目中村福之助 四代目中村歌之助 襲名披露 口上(こうじょう)


橋之助改め芝翫
中村国生改め橋之助
中村宗生改め福之助
中村宜生改め歌之助
     坂田藤十郎
     幹部俳優出演

一谷嫩軍記
三、熊谷陣屋(くまがいじんや)

熊谷直実  中村橋之助改め芝翫
相模    中村魁春
藤の方   尾上菊之助
亀井六郎  中村歌昇
片岡八郎  尾上右近
伊勢三郎  中村宗生改め福之助
駿河次郎  中村宜生改め歌之助
梶原平次景高 中村吉之丞
堤軍次   中村国生改め橋之助
白毫弥陀六 中村歌六
源義経   中村吉右衛門


四、藤娘(ふじむすめ)

藤の精 坂東玉三郎



http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/490

10/15 ミス・サイゴン@帝国劇場

市村正親が今回の公演で卒業するということで話題のミス・サイゴンを観ました。

市村正親のエンジニアはやはり最後ということでこれまで以上に気合が入って演じているように見えました。
クリス、ジョンは過去のキャストが印象に残っているせいか、ちょっと物足りなく感じてしまいました。
特にジョンは岡幸二郎さんで何回も観ているのでそれと比較してしまいました。
笹本玲奈さんも良かったですが、次回のレ・ミゼラブルにも出ないので、もしかしたらキム役も今回で最後かもなあと思いながら観てました。

それと、席が今までで一番前の方だったのでよく見えたのですが、冒頭のシーンやバンコクのシーンで後ろの方の人たちもけっこういろんな動きをしているんだなあというのが今回はじめて気がついて面白かったです。

エンジニア 市村正親
キム    笹本玲奈
クリス   上野哲也
ジョン   上原理生
エレン   知念里奈
トゥイ   藤岡正明
ジジ    池谷祐子

http://www.tohostage.com/miss_saigon/index.html